「マスタング」「カマロ」「チャレンジャー」。最近では「フェアレディZ(RZ34)」。あくまでデザイン的な話ながら、すでに”先祖返り系”のデザインはひとカテゴリーとして確立した感すらある。
一方でトヨタは「86」や「スープラ」など。「FR」とか「直6」とか、メカニカルなキーワードをは引き継ぎつつ、デザインは過去と決別するような潔さがある。トヨタ86こと「ZN6型」がデビューしたのは2012年のことだ。少なくとも小型のFRクーペということ以外は、外観から「AE86」の面影を感じ取ることはむずかしかった。
ZN6型の開発は自動車を取り巻く環境の変化、自動車自体の在り方の変化に反応し、若者が乗ってイジって楽しめる、かつてのAE86のようなスポーツカーを作りたいというコンセプトからスタートしている。どちらかといえば、AE86の姿形を復活させるのではなく、その概念そのものを現代流に昇華させたものをプレゼンテーションしたい、という開発陣の想いが伝わってくる。
ハチロクのリバイバルにあたって、一番の副産物はAE86の時代では考え得なかった、SUBARU製2L 水平対向4気筒エンジンの搭載だろう。スポーツカーらしい低いエンジンフード高とバランスのいい低重心のドライブトレインは、MT、ATを問わず気持ちのいい走りを味わわせてくれた。
そんなZN6は”超正常進化”を経て、2021年に新型「ZN8型」へとシフト。車名も従来のTOYOTA 86からGR 86へ変更を受けている。最大の変化は、エンジンの排気量が2.4Lへと拡大され、よりフレキシビリティをアップさせたことだろう。スタイリングも刷新されたがZN6型の方程式から外れたものではなく、昇華という表現が相応しい。
メイクアップではスープラにはじまり、「ヤリス」と「GR専売モデル」のモデル化に熱心だが、86も当然ながら、ほぼモデルカー業界最速で1/43&1/18で製品化し、HKSやTOM’Sのチューンドバージョンもラインナップしている。
ここで写真をお見せするモデルカーは、2022年にハチロクの復活から10年が経過したことを受けて期間限定受注され、数百台が生産されたといわれる「RZ 10th Anniversary Limited」をモチーフにしている。ZN6型の初期モデルを彷彿とされる特別色、フレイムオレンジのボディカラーも実車の色調を忠実に再現。細かな記念エンブレム類も実車を忠実にトレースしている。
モデルカーの設計にあたっては実車スキャン→スキャンデータを元に3D CADでモデルカーデータを設計→試作および改修の後、中国の自社工場で1台1台ハンドメイド生産というプロセスを経ている。基本形状の実車への忠実さ、実車らしく見せるための部品構成、そして仕上げのクオリティを見れば\31,900(税込)のプライスも納得いく。
まだ現行車種ではあるが、純ガソリンエンジン、ともすれば最後の水平対向4気筒FRスポーツ車となる可能性も高いGR 86。その初のアニバーサリー系限定車としてリリースされたRZ 10th Anniversary Limitedは中古車相場も高値安定で、すでにコレクターズカーと化しており、実車オーナーならばもちろん、ハチロクファンならば手中に収めておきたいモデルカーとなろう。

文・鵜飼誠/提供元・CARSMEET WEB
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