現在の日本では、マッチが使われることはほとんどない。たとえ店頭で見かけても、何箱もセットになって100円程度と、1本の値段は限りなく安価だ。しかし世界に目を向けると、そんなマッチを作るために命懸けで働いている人々がいる。彼らに降りかかった悲劇を米紙「Los Angeles Times」や香港紙「South China Morning Post」などから紹介しよう。

 2019年6月21日、インドネシア北スマトラ州の都市ビンジャイにあるマッチ工場で、5人の子供を含む30人が焼死する火災が発生した。労働者がライターの点火機構のテストをしていたところ、可燃性物質に引火してしまったことが出火原因と見られている。同工場は行政の管理下にない違法操業だったため、経営者3人が逮捕された。

 そして、火災の悲惨さを物語る遺体画像の数々が海外の過激画像サイト「Documenting Reality」で公開された。焼け跡に累々と折り重なっている真っ黒焦げの遺体――。炭化して崩れ落ちた皮膚の亀裂から、生焼け状態の筋肉が見える。灼熱地獄に飲み込まれ、生きたまま業火で焼き尽くされた犠牲者たちの姿は、目を覆いたくなるほどの地獄絵図である。

 犠牲となった労働者たちは全員女性だった。数人は子供を同伴して仕事に従事していたため、死者の中に子供も含まれていたのだ。妻のマルリナさんを失ったファイサル・リザさんは「私の家からたった200メートル離れた裏通りにある工場が火事だと聞いたとき、私はお祈りのためにモスクへ歩いていました。私は彼女を救いたくて現場へと走りましたが、遅すぎました。私がそこに着いたとき、もう工場は全焼していました」と語る。妻と10歳の娘を失ったソフヤンさんは、工場の正面ドアが施錠されていたため、妻たちは逃げられなかったと主張する。そして、「DNA検査でしか遺体を確認できません。妻たちの遺体の状態がどうであろうと、(遺体を)すぐに家に連れ帰りたいです。すぐに埋葬したいんです」と悲しみを吐露する。

 インドネシアには違法な操業や安全管理が不徹底な工場が多数存在し、労働者の事故も後を絶たない。労働環境の改善は急務といえる。
(文=標葉実則)

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参考:「Los Angeles Times」、「South China Morning Post」、ほか

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提供元・TOCANA

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