ヴィッセル神戸所属FW大迫勇也の浦和レッズ戦におけるオフサイド疑惑をはじめ、審判の判定が再三にわたり議論の対象となっているJリーグ。大迫のゴール判定を巡る日本サッカー協会(JFA)審判委員会の説明に疑問の目が向けられる中、Kリーグ(韓国)では2024シーズンから審判員の昇降格制度を実施することが正式決定している。
Jリーグは審判員のレベル向上を図る中、今年5月に「審判交流プログラム」の一環として、イングランドから審判員を招へいしたほか、9月には日本代表「森保ジャパン」の欧州遠征に扇谷健司JFA審判委員長が帯同。様々な取り組みを実施しているが、今もなお誤審に対するファン・サポーターからの批判が止まない。中でも物議を醸したのが、J1第32節・浦和対神戸における大迫の決勝ゴールだ。
このJ1優勝争いの行方を左右する一戦では、1-1で迎えた後半アディショナルタイム90+6分、神戸所属GK前川黛也がMF中島翔哉のフリーキックを直接キャッチすると、GK西川周作がゴール前まで上がっていた中、素早くパントキック。ハーフウェーライン付近で待ち構えていた大迫のもとにボールが渡ると、大迫がロングシュートで無人のゴールに流し込んだ。
しかし当該シーンでは前川がボールを蹴り出す瞬間、自陣に残っていた浦和の選手はDF大畑歩夢のみ。くわえて大迫の身体の一部が敵陣に入っていることが、X(旧ツイッター)上に投稿された画像から確認されているだけに、オフサイド疑惑がささやかれていたほか、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)判定が不可能な事象という見方も。元国際審判員の家本政明氏は、スポーツ動画配信サービス『DAZN』の『Jリーグジャッジリプレイ』に出演した際、オフサイドとの見解を示した。
しかし、JFA審判委員会は8日実施のレフェリーブリーフィングで「VAR側に届く映像で、大迫のシーンを捉えているものはなかった」と説明。誤審の可能性について「非常に難しい事象」と述べるにとどまると、ネット上で審判委員会の説明に対する反発の声が噴出。川崎フロンターレOBの武岡優斗氏が「ずるい」と批判するなど、元Jリーガーからも厳しい意見が上がっている。
大韓サッカー協会(KFA)は今月18日、1部リーグから4部リーグを対象とした審判員昇降格制度の導入を公式発表。これによると、プロのみならずアマチュアの審判員も評価の対象であるという。
また国際審判員育成を目的としたアカデミーコースが新設されるとのこと。優秀な成績を収めた20人程度の審判員を対象としたコースであり、VARの運用方法をはじめ、国際サッカー連盟(FIFA)の講師による講義が行われるという。
なお韓国では、審判員のミスによりあわや没収試合となる事例があった。先月28日開催の1部リーグプレーオフ・浦項スティーラーズ対全北現代では、浦項が先発出場選手の負傷により1枚目の交代カードを切る際、審判員が交代選手を誤認。6分間にわたり浦項が12人でプレーしていたことになった。
これを受けて全北は韓国プロサッカー連盟に対して異議を申し立てたが、連盟は没収試合扱いだという主張を棄却。KFAの審判委員会は、この試合を担当した審判員6名を今季残り試合で担当に割り当てない決定を下している。