知っているようで知らないアメリカの歴史。激動のアメリカ史を一冊で網羅できる書籍『ビジュアル版 アメリカ歴史地図』が東京書籍から発売された。
大判の地図や写真、図版を400点以上収録、また年表や50州の要覧も掲載し、大国「アメリカ」をビジュアルで立体的に紹介する。
400点以上の図版収録『ビジュアル版 アメリカ歴史地図』
キードリック・ロイ氏、チェルソ・A・メンドーサ氏、タマラ・ヴェニット・シェルトン氏など、第一線で活躍する気鋭の研究者が執筆した本書。
一橋大学社会学部・大学院社会学研究科教授であり、アメリカ合衆国史や人種・エスニシティ・ジェンダー研究を専門とする貴堂嘉之氏が日本語版監修を務める。訳者は岩井木綿子氏。
先史時代の南北アメリカ大陸からアメリカ合衆国の現在まで、豊富なビジュアルと平明な解説、そして意欲的な観点によって、アメリカ史を立体的にアップデートする。
本文は「第1章 南北アメリカ大陸の比較考古学 紀元前5万年頃~後1600年頃」から「第10章 進歩の問題 1950年~現在」までの10章構成。
その歴史は紀元前5万年頃、最初の移住者が南北アメリカ大陸に到達した時代から始まり、15世紀末にコロンブスらヨーロッパ人が「新大陸」として足を踏み入れた時に転機を迎える。
本書が特徴的なのは、後世の人間が解説用に作った教科書的な図版とは違い、世界史上の各時期に同時代人が作った地図を多く掲載している点だという。
そのためヨーロッパ人が描いた地図には征服の野望にもとづく空間認識が、先住民が描く地図や絵には恐怖や暴力が浮かび上がり、同時代人の世界理解を垣間見ることができる。
アメリカ合衆国独立から現在に至る後半パートでは、先住民や黒人、アジア系移民など、非白人の視座も大きな柱として、従来の単線的な歴史記述を超えた新しいアメリカ史を提示しているのも特徴だ。
最後の第10章では、1960年代以降の大量収監や新保守主義、9.11同時多発テロからヘイトクライムの急増、オバマ氏からトランプ氏へと現代史を網羅的に扱う。
同章の最終頁が2021年1月6日(水)の連邦議会議事堂襲撃の写真で締めくくられるのも象徴的だという。
現代アメリカを理解するためにも、この地域を専門とする歴史学、人類学、考古学、地域研究などの研究者はもちろんのこと、高校生や大学生、一般の方々にも本書をおすすめしたいと監修者の貴堂嘉之氏は述べる。
アメリカ史、ひいては世界史を理解するのに欠かせない一冊。現代人の基礎教養として何度も読み返したい書だ。
『ビジュアル版 アメリカ歴史地図』
日本語版監修:貴堂嘉之
著者:デイヴィッド・M・カーバロ他
訳者:岩井木綿子
価格:6,380円(税込)
判型:B4変型判・384頁
(SAYA)