「吊り橋効果」は美女でしか生じない
吊り橋効果の範囲については、1981年に「Journal of Personality and Social Psychology」に投稿された、米国メリーランド大学のグレゴリー・ホワイト氏らが行った研究で検証されています。
この実験には男性26名が参加しました。
参加者はメディカルチェックを終えた後、15秒間走る人(低覚醒条件:あまりドキドキしていない)と2分間走る人(高覚醒条件:ドキドキしている)の、2つのグループに分け、1人の女性が自己紹介をする動画を1つ見て、魅力度の評価してもらいました。
この自己紹介動画は同じ女性が服や化粧を変え、魅力度が高い場合(高魅力)と、魅力度が低い場合(低魅力)の2つのパターンを用いています。
実験の結果、「高魅力」の女性は、ドキドキしていない場合(低覚醒)と比較して、ドキドキしているとき(高覚醒)の方が魅力を高く評価されたのに対し、「低魅力」の女性はドキドキしているときの方(高覚醒)が魅力度が低くなってしまったのです。
この結果は、「ドキドキ」を恋愛感情であると勘違いするためには、そもそも相手が恋愛対象にならなければ意味がないということを示しています。
もしそうでなければ、走ったあとの疲れなどが影響して、逆に「なんだこいつ」と魅力を低く評価してしまう可能性があるのです。
恋愛を心理学的に解説した本を読んだり番組を見ると、「吊り橋効果」が普遍的な恋愛テクニックとして紹介されることが少なくありません。
この効果を利用し、デートをするときはジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に行くことが推奨されています。
しかしこの効果はよく検証してみると、そもそも好意を持っている相手の魅力を増しているものであって、恋愛対象にならない相手には逆効果になってしまうようです。
ただ、デートの約束を取り付けるまで仲が進行している相手ならば、十分に効果はあると考えていいかもしれません。そのため、多くの解説ではこの魅力度によって効果がまったく逆に働くという研究報告の話は省かれているのでしょう。
吊り橋効果は気になる相手だからこそ、ドキドキを恋愛と勘違いし、相手の魅力を過大に評価してしまう効果といえます。
まるで親交がない相手に対して、自分に恋愛感情を向けさせる方法としては有効とは言えないどころか、嫌われてしまうかもしれないので注意しましょう。
参考文献
Sexual Attraction and Survival Mode
元論文
Passionate love and the misattribution of arousal.
Some Evidence for Heightened Sexual Attraction under Conditions of High Anxiety
Cognitive, social, and physiological determinants of emotional state
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。