日本のパスポートは、世界最強級だ。ビザなしで渡航できる外国数のランキングで5年連続首位(年末ベース)となり、2023年こそ3位に後退したものの、依然トップ3に含まれている。

それにもかかわらず、日本人のパスポート保有率は2割以下となっている。何ともったいないことだろうか。

最新ランキングのトップ3は?

イギリスのコンサルティング会社であるヘンリー・アンド・パートナーズは、国際航空運送協会(IATA)のデータを分析し、前述のランキングを発表している。2023年7月の発表では、ランキングは以下の通りだった。

順位 国名 ビザなしで渡航
できる外国数
1位 シンガポール 192
2位 ドイツ、イタリア、スペイン 190
3位 日本、韓国、フィンランド、スウェーデン、フランス、
ルクセンブルク、オーストリア
189

ちなみにランキングの最下位はアフガニスタンで、ビザなしで渡航できる外国数はわずか27にとどまる。

アフガニスタンのようなランキングが下位の国と比べると、国籍が日本にあるというだけで最強級のパスポートを手にすることができる日本人は、なんと恵まれていることか。

2022年の保有率は17.1%

そんな恵まれている日本人だが、パスポートの保有率はなんと2割に満たない数字となっている。

外務省が発表している「旅券統計」によれば、2022年時点で有効なパスポートの数は日本国内で2,091万5,143冊でとなっており、人口に占める保有者数の比率は17.1%だ。

パスポートの保有率はコロナ禍を挟んで大きく落ち込み、その結果、保有率が20%を割ったという背景があるが、コロナ禍前の2019年でも保有率は23.8%と低水準だった。

ちなみに日本はヨーロッパや北米の国々と比べても低い。

もちろん、日本は他の国と陸続きではないため、別な国と国境を多く接するヨーロッパの国々などとは異なる背景がある。しかしそれにしても、このグローバル時代において保有率が2割を切っていることに驚く人は多いのではないか。

保有率がまさかの10%割れも?

日本人のパスポートの保有率の低さは、さまざまな国から旅行者が訪れているインバウンド観光の活況ぶりと比べると、非常に対照的だ。

日本人はこのままもっと内向きになっていくのだろうか。今後保有率がどう変化していくかについては確定的なことは言えないが、最近の保有率の低下傾向をみると、保有率が10%割れの日が来るのも十分あり得る未来だ。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。