いつの時代も「軽量化」はスポーツカーの正義

 マクラーレン・アルトウーラは、あくまで正攻法の軽量化によって、軽快なハンドリングを守った最新のPHEVスポーツである。電子制御を多用してハイブリッド化に伴う重量増の悪影響を相殺しようとしたランボルギーニ・レヴエルトとは、いわば対照的な存在だ。

 2010年にマクラーレン・オートモーティブとして再出発を果たした彼らは、これまで全モデルにV8ツインターボ・エンジンを搭載してきた。だがアルトゥーラは高効率の3リッター・V6ツインターボを新開発。その重量は160kgで、V8エンジン比で50kgも軽量に仕上げた。もちろんパフォーマンスは優秀。エンジン単体で585psの最高出力と585Nmの最大トルクを発揮する。

 これと組み合わされるハイブリッドシステムも徹底的に高効率化が追求された。システム総重量を130kgに抑える一方、こちらも95ps/225Nmと十分なパフォーマンスを誇る。

【最新スーパースポーツ試乗】マクラーレン・アルトゥーラは圧倒的に軽量なPHEVスポーツ。ブランドの未来を予見する意欲作である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【最新スーパースポーツ試乗】マクラーレン・アルトゥーラは圧倒的に軽量なPHEVスポーツ。ブランドの未来を予見する意欲作である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 軽量化への努力はパワートレーンだけにとどまらない。クルマの基本となるマクラーレンの全モデルが採用してきたカーボンモノコックには新開発の「マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャ(MCLA)」を投入。従来以上の軽量・高剛性を実現するとともに、車体中央の低い位置にハイブリッド用バッテリーを搭載することで、重量バランスの悪化を最小限に留める工夫を凝らしている。

 このようにして誕生したアルトゥーラは、結果としてPHEVスーパースポーツカーとしては驚異的に軽い1395kgの乾燥重量を実現。システム出力は680psだから、パワーウェイトレシオはわずか2.05kg/psにすぎない。
 動力性能はすさまじく、0→100km/h加速は3.0秒でクリアし、0→200km/h加速は8.3秒で走り抜ける。最高速度は330km/hでスピードリミッターが作動する。すべてが素晴らしいデータである。

【最新スーパースポーツ試乗】マクラーレン・アルトゥーラは圧倒的に軽量なPHEVスポーツ。ブランドの未来を予見する意欲作である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 軽量化の成果は、ステアリングを握ればたちどころに実感できる。いかにもマクラーレンらしい素直で軽快なドライビングフィールが、クルマが動き出したその瞬間から堪能できるのだ。しかも、軽量設計を突き詰めたからといって快適性はまったく損なわれていない。これもまたマクラーレンの特徴であるゴツゴツ感の軽い滑らかな乗り心地を楽しめる。まさに大人のクルマだ。

 もちろんハンドリングは軽快そのもの。身のこなしに人工的なところはいっさい感じられず、「どんな状況でも思うがままにコントロールできる」という自信をドライバーに与える。マクラーレンが伝統としてきたステアリング・インフォメーションの的確性にも、改めて惚れ惚れした。
 その上で最長31kmのEV走行が可能なのが、アルトゥーラのもうひとつの横顔。エンジンを始動することなく静寂に包まれながら走らせるとき、あなたはスーパースポーツの未来がひとあし先にやってきたことを実感するに違いない。

マクラーレン・アルトゥーラ 主要諸元

【最新スーパースポーツ試乗】マクラーレン・アルトゥーラは圧倒的に軽量なPHEVスポーツ。ブランドの未来を予見する意欲作である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

グレード=アルトゥーラ
価格=8DCT 2965万円
全長×全幅×全高=4539×1976×1193mm
ホイールベース=2640mm
車重(乾燥重量)=1395kg
エンジン=2993cc・V6DOHC24Vターボ
エンジン最高出力=430kW(585hp)/7500rpm
エンジン最大トルク=585Nm(59.7kgm)/2250〜7000rpm
Eモーター=Axial Flux motor
モーター最高出力=70kW(95hp)
モーター最大トルク=225Nm(22.9kgm)
システム最高出力=500kW(680hp)/7500rpm
システム最大トルク=720Nm(73.4kgm)/2250rpm
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:235/35R19/リア:295/35R20
駆動方式=RWD
乗車定員=2名

提供元・CAR and DRIVER

【関連記事】
「新世代日産」e-POWER搭載の代表2モデル。新型ノートとキックス、トータルではどうなのか
最近よく見かける新型メルセデスGクラス、その本命G350dの気になるパワフルフィール
コンパクトSUV特集:全長3995mm/小さくて安い。最近、良く見かけるトヨタ・ライズに乗ってみた
2020年の国内新車販売で10万台以上を達成した7モデルとは何か
Jeepグランドチェロキー初の3列シート仕様が米国デビュ