西側軍事専門家によると、F16戦闘機は核兵器を搭載する能力を有していることだ。ウクライナは独自の核兵器を有していないが、F16戦闘機が核兵器を搭載できる能力を持つため、ロシア側はF16戦闘機のプレゼンスにこれまで以上に大きな脅威を感じることになる。

そのことが戦争の拡大抑止力として働くか、それともロシア側の大量破壊兵器の使用といったカードが現実的になるかは分からない。実際、ロシアのラブロフ外相はF16戦闘機のウクライナ供与はロシア側にとって、「核の脅威だ」と警戒心を露わにしている。

繰り返すが、欧米諸国に、米独の主力戦車のウクライナ供与決定の時のように無条件な歓迎が聞かれないのは、F16戦闘機の供与で、ウクライナ戦争が第3次世界大戦に突入する恐れが排除できなくなるからだ。バイデン米政権はウクライナ側に、「絶対にロシア領土には侵攻しないように」と何度か釘を刺してきた。ウクライナ側も米国の要請を受け、これまでその約束を守ってきている。

なお、ウクライナの元戦闘パイロットで軍事専門家のオレクシイ・メリニク氏はドイツのメディアとのインタビューで、「F16戦闘機はウクライナ軍の攻勢を支援し、防空を改善する手段となることは期待できるが、ウクライナがF16戦闘機で制空権を獲得することはないだろう。ロシアの制空優位性を相殺できるだけだ」と主張した。

その理由として、ロシアの防空システムの優秀性や高性能のスホーイSu-35戦闘機の脅威などを指摘している。ただし、「欧州戦一闘機ユーロファイターはF16よりも一世代進んでいるが、その数は約600機しかない。一方、F16は世界で最も多く利用可能な戦闘機であり、部品の供給にも問題はない」と説明し、米国製F16のウクライナ供与は合理的な選択肢だと説明している。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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