新興財閥アダニ・グループの不正会計問題
インド経済にとってアキレス腱といえるインフラの整備を担っているのは財閥グループだが、今年1月下旬、激震が走った。新興財閥アダニ・グループが米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチによって不正会計が暴かれ、窮地に立たされたのだ。いわゆる「アダニ・ショック」だ。2021年度の売上高が3兆円を超え、今やインド経済を担う存在になったアダニだが、ヒンデンブルグの指摘直後に同社の株価は暴落し、インドの金融市場全体が動揺した。
騒動から4カ月以上が経ったが、アダニ・グループの株価はいまだにその影響から脱することができておらず、銀行団との融資交渉も難航している。創業者のゴーダム・アダニ氏は、モディ氏と同じ西部グジャラート州の出身であるため、野党から政治との癒着が厳しく追及されているのも気になるところだ。
貧富の差が極端に激しい社会を反映するように、インド経済は少数の大企業に牽引されており、その足腰は脆弱だといわざるを得ない。中国をはじめアジアの国々は、労働集約型製造業(中小企業が中心)の成長を足がかりに経済成長をスタートさせたが、インドはそのステップを踏むことができていない。世界銀行によれば、製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%にすぎない。製造業に弱みを抱えているせいでインドの労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジア地域で最も低い。スキルを発揮できる雇用の場が提供できなければ、豊富な若年労働力は「宝の持ち腐れ」だ。持続的な成長の源泉にはならない。
好調に見えるインド経済にも景気後退の影が忍び寄ってきている。インド人材採用連盟は5月下旬、「同国のIT業界で昨年4月から今年3月までの1年間に嘱託社員の雇用が前年に比べ7.7%減少し、約6万人が失業した」と発表した。専門家の間でインド経済の今後を悲観視する声が出ている(4月19日付日本経済新聞)。「第2の中国」として期待されるインドだが、過去何度となく高成長の期待を裏切ってきた。今回も「二の舞」を踏むことになってしまうのだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?