系外惑星は6つ子だった!しかも全てが尽数関係に

チームは2022年のTESSデータから、新たに2つのトランジットの存在を見出しました。

この2つはそれぞれ1回しかトランジットが見つかっていないため、正確な周期が分かりません。

しかし、先の4つの惑星がすべて尽数関係にあることを踏まえると、これら2つも尽数関係にあると考えるのが自然です。

そこでチームは、5つ目の惑星の周期は4つ目の惑星(約30.79日)に対して尽数関係をもち、さらに6つ目の惑星の周期は5つ目の惑星に対して尽数関係をもつと仮定しました。

そして1:2、2:3、3:4、4:5、5:6と様々なシナリオを想定しつつ、追加観測をした結果、見事に5つ目の惑星の周期は4つ目の惑星(約30.79日)に対して3:4となる約41.06日、そして6つ目の惑星の周期は5つ目の惑星(約41.06日)に対して3:4となる約54.77日であることが判明したのです。

恒星HD 110067を中心に発見された6つの惑星の位置を描いたイメージ図
恒星HD 110067を中心に発見された6つの惑星の位置を描いたイメージ図 / Credit: 東京大学大学院 総合文化研究科 – 共鳴し合う6つ子の惑星を発見(2023)

以上から、HD 110067を公転する6つの系外惑星はすべて尽数関係を持つという驚異的な結果となりました。

こうした惑星系では、原始惑星円盤の中から複数の惑星が兄弟姉妹のように誕生しますが、その公転軌道はちょっとした要因で簡単にズレてしまうため、これほど美しく規則的に共鳴している惑星系はきわめて珍しいです。

この6つ子たちは、その成長時に軌道を乱すような障害にまったく遭わなかった可能性が高いと見られます。

こちらは6つ子の惑星の公転イメージを動画にしたものです。

6つ子の惑星の公転イメージ
6つ子の惑星の公転イメージ / Ctedit: University of Chicago – Study led by UChicago astronomer Rafael Luque may tell us about how planets form(2023)

またチームによると、6つの惑星は地球の1.9~2.9倍の半径があり、質量測定の結果、そのサイズの割には軽い(体積密度が低い)ことから、水素の外層を持つサブネプチューン(地球より大きく海王星より小さいサイズのガスや氷などから構成される厚い大気を持つ惑星)であると考えられています。

公転周期からも主星(太陽)に近い惑星なのは明らかなので、この点(太陽に近いサブネプチューン)も興味深い部分でしょう。

なお、7つ目以降の惑星の存在も示唆されており、今後の調査次第では、さらに兄弟の数が増えるかもしれません。

参考文献

共鳴し合う6つ子の惑星を発見――全ての隣り合う惑星の公転周期が尽数関係を持つ惑星系HD 110067――

Scientists discover rare 6-planet system that moves in strange synchrony

元論文

A resonant sextuplet of sub-Neptunes transiting the bright star HD 110067

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。