アートを通し、“自身のあり方”について問いかける。

金沢市中心部にある現代アート美術館「KAMU kanazawa(カム カナザワ)」が、潘逸舟(ハンイシュウ)氏の2つの作品「波を掃除する人」「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」の展示を12月16日(土)から2025年12月28日(日)まで市内の2か所で実施する。

©︎Ishu Han, Courtesy of KAMU kanaz

©︎Ishu Han, Courtesy of KAMU kanaz

潘逸舟氏の2作品を金沢市内で展示

今回、「KAMU kanazawa」では潘逸舟氏の作品を2つのスペースで同時展示。

片町の商業施設「プレーゴ」内の「KAMU k≐k(ケーケー)」には「波を掃除する人」を。同じく中心市街地にある商業施設「香林坊東急スクエア」内の「KAMU sky」の展示スペースを拡張したエリアには、「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」を展示する。

「波を掃除する人」

映像作品「波を掃除する人」は、波を“社会”という大きな動きや終わりのない労働に例え、その中で自分の立ち位置を見つけなければならない現代人の姿を表現する。

“A person cleaning waves” 2018-2019, ©︎Ishu Han, Courtesy of ANOMALY

“A person cleaning waves” 2018-2019, ©︎Ishu Han, Courtesy of ANOMALY

同作品は、潘逸舟氏が中国で見かけた街の清掃作業員と、ゴミが絶え間なく残る状況からインスピレーションを得て制作された。今回の作品は過去最大クラスの大きさとなり、鑑賞者は永遠と押し寄せる波の中に溶けていくような没入感を味わうことができる。

「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」

一方、「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」は、鳥かごのように加工された段ボールを使用したサウンドインスタレーション。

The Day Spinach Dreamed in Japanese” 2020, ©︎Ishu Han, Courtesy of ANOMALY

The Day Spinach Dreamed in Japanese” 2020, ©︎Ishu Han, Courtesy of ANOMALY

同作品は、潘逸舟氏が外国人技能実習生として農業に従事した経験をもとに、「自分のアイデンティティをどのように獲得するか」「社会とどのように繫がり自身を形成するか」といった“当事者と他者の関係性”を詩的に表現。

本展では鳥かごを1つだけ展示し、サウンドと展示空間に対するギャップを作る演出で作品メッセージにフォーカスする。

映像・インスタレーション・写真・絵画や身の回りにあるものなど、さまざまなメディアを用いた作品を制作する潘逸舟氏。彼は幼い頃に上海から青森に移住した自身の経験をベースに、個人と社会の距離、そしてそれらの繋がりの中で生じる疑問や戸惑いを、真摯かつユーモアを交えながら表現している。

今回の展示作品も、鑑賞者に多くの気付きを与えてくれるに違いない。

潘逸舟氏「波を掃除する人」「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」展示
会期:12月16日(土)~2025年12月28日(日)
会場:KAMU k≐k、KAMU sky

(IKKI)