海水の淡水化や気候変動の予測に期待
現状、光分子効果はヒドロゲル上でしか観察されていませんが、研究者たちは海面や雲の中など他の条件下でも同様に発生する可能性を指摘しています。
海面からの蒸発を考えたとき、これまでも理論値と合わないことが多くあったためです。
もっと身近な例で言えば、晴れの日と曇ってる日で、洗濯物の乾き方が違うのも光分子効果のせいかもしれません。
光分子効果を使えば、熱エネルギーを使わなくても水の蒸発を早めることができます。
このため、蒸留を用いた浄水や海水の淡水化において、安価で大幅に蒸発の効率を上げられることが期待されています。
また、光分子効果を踏まえた蒸発プロセスを数式化できれば気候変動の予測がより正確になる可能性もあります。
光分子効果はまだ発見されたばかりで、仮説の域を出ない部分も少なくありません。
しかし、もし実用化されれば「水」という資源の幅が大きく広がるでしょう。
今後の研究に期待が高まりますね。
参考文献
In a surprising finding, light can make water evaporate without heat
元論文
Plausible photomolecular effect leading to water evaporation exceeding the thermal limit
ライター
いわさきはるか: 生き物大好きな理系ライター。文鳥、ウズラ、熱帯魚などたくさんの生き物に囲まれて幼少期を過ごし、大学時代はウサギを飼育。大学院までごはんの研究をしていた食いしん坊です。3人の子供と猫に囲まれながら、生き物・教育・料理などについて執筆中。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。