人は利き手側にあるものに対してポジティブな感情を抱く傾向があるようです。
スタンフォード大学のダニエル・カササント氏(Daniel Casasanto)らの研究では、利き手の左右と感情の快不快の関係性を検討しています。
結果、利き手側の方に快感情を、非利き手側の方に不快感情を結びつける傾向があることが確認されました。
この現象は「水平情動メタファ」と呼ばれています。
「right」という単語が「右」を意味すると同時に「正しさ」を意味するのは、右側に快感情を結びつけやすい右利きの人が多いことに起因しているのかもしれません。
この研究は、学術誌「Journal of Experimental Psychology: General」にて2009年12月14日に報告されています。
なぜ right は「正しい」と「右」を意味するのか?
「right」には大きく分けて2つの意味合いがあります。
それは、「右」と「(道徳的、社会的な)正しさ」です。
読者のみなさんは、この「right」にこの2つの意味合いがあることに疑問を持ったことはありませんか。
「right(正しさ)」の語源について調べてみると、その起源は古代ローマに遡ります。
結論から言うと、その当時のローマには人間の体の右側を良いもの、左側にあるものを悪いものと捉える考えがあり、それが元となったと言われています。
それ故、お城の螺旋階段は右回り、左利きの人は騎士になれなかったと言われています。
では、どうして右側にあるものを良いと感じるのでしょうか。
近年のスタンフォード大学のカササント氏らの研究が、この疑問にヒントを与えてくれそうです。
実験には大学生219名が参加しました。
参加者にはシマウマ・パンダ課題を行ってもらっています。

シマウマ・パンダ課題とは、画面の下部に位置する人型のキャラクターの左右の正方形の空欄に、シマウマとパンダのどちらに配置するかを決める課題です。
課題を行う際に、真ん中のキャラクターはパンダが好きで、シマウマが嫌いであることが参加者に伝えられます。
こうした条件を与えた上で実験を行うと、左利きの人はキャラクターの左側に、右利きの人はキャラクターの右側に、パンダを配置する傾向がありました。

後続の実験では、紙面の左右に配置された宇宙人に対し、「どちらの方が魅力的(知的、誠実)か」の質問に回答してもらい、利き手側の方の宇宙人がポジティブな評価がされやすいことが分かっています。
この結果は、快・不快などの情動といった抽象的な概念が、身体の左右の空間と強い結びつきを持っていることを示唆していると言えるでしょう。
この現象は「水平情動メタファ」と呼ばれています。
ではなぜ「水平情動メタファ」は生じるのでしょうか。