【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=フェラーリ・ローマ・スパイダー/価格:8DCT 3280万円。ローマは「ラ・ヌォーバ・ドルチェ・ヴィータ」(新・甘い生活)をコンセプトに開発。スパイダーは一段と走りが洗練。クルマとの対話が楽しめる。トップの開閉所用時間は13.5秒。60km/h以下なら走行中でも操作できるシステム、『CAR and DRIVER』より引用)

電動ソフトトップは5層構造。13.5秒で世界が変わる!

クーペの発表から3年。2023年の3月にローマ・スパイダーは登場した。マラネッロ製FRオープンスポーツとしてはデイトナ・スパイダー(365GTS/4)以来となる実に54年ぶりのソフトトップモデルである。

ローマの電動ソフトトップは5層構造。吸音効果の高い素材を挟み込んでいる。そして最新のソフトトップ式オープンモデルがたいていそうであるように、ローマスパイダーのトップもまた「硬い」。実にしっかりとした印象だ。骨組みは軽量なZ構造タイプで、リアスクリーンと共に格納スペースへと収まる。
開閉に要する時間は13.5秒。センターコンソールにあるスイッチを長押しして操作する。ソフトトップながら60km/hまでなら走行中でも操作可能だ。

トップの素材にもこだわった。とくにブラック以外のカラートップ(レッド/マロン/グレー/ネイビー)ではカーボンファイバーのような格子状に生地を織り込んで独特の光沢と立体感を表現する。ボディカラーとのコントラストを楽しむというソフトトップならではの魅力がいっそう増した。オーナーの選択センスが問われる部分だ。

【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

デュアルコクピットスタイルのインテリアは基本的にクーペと同じ。フロントシートは形状を含めクーペと変わらない。リアシートでは穴の空いた大きな板がシートバックと一体になっていることが目立つ違い。実は大きな板はウィンドディフレクターで、トップ開閉と対になったスイッチを押せばゆっくりと跳ね上がる(170km/hまで操作可能。収納は手動式)。展開さえしておけば超高速域でもキャビンの風の流れは適度。
トップ生地と同じ素材で覆われたトノカバーはリアヘッドレストと一体化され、オープン時の見栄えも美しい。

【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

オープン化による重量増は84kg。スパイダーはサイドシルやAピラーの構造がクーペとは異なる。サスペンションの制御をはじめ動的なキャリブレーションもスパイダー専用のセッティングだ。そのほか進化した装備としてはレーンキープアシストと緊急ブレーキの備わった最新のADASを挙げておこう。このADASは今後、クーペにも装備される。

スパイダーは甘美なドライブフィールが独自の魅力

生産は2023年末に左ハンドルモデルから始まる予定だ。クーペとスパイダーの二本立てとなったことで名実ともにローマはポルトフィーノMの後継モデルという位置付けになった。ちなみにヒット作のポルトフィーノMは既受注分で生産終了となる。

パワートレーンはクーペと全く同じ。すなわち最高出力620hp/最大トルク760Nmの4リッター・V8ツインターボに8速DCTを組み合わせている。
パフォーマンスは優秀。メーカー公表の加速スペックは0→100km/hがクーペと共通の3.4秒、重量差が効いてくるはずの0→200km/hでも0.4秒落ちの9.7秒だ。実質的なパフォーマンスはクーペと変わらない。つまり十分に速い。

【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

オープン状態で右足を踏み込んでいけば、風を感じるぶんクーペ以上の速さを感じた。抑制の効いた、それでいてクルマ好きにはたまらないエグゾーストサウンドのシャワーも高揚感をいっそう増幅させる。

乗り味は洗練。クーペより僅かに良い乗り心地がことのほか印象に残っている。前輪のつっぱり感が薄れ、ハンドルを握る両手との一体感にしなやかさが随分と増した。ワインディングロードを走らせるといっそう顕著にスパイダーの進化を感じる。ステアリング操作と正確にシンクロする前輪の動きはローマ最大の魅力だが、スパイダーでは精緻さがさらに増し、足回りのリアクションは極めて自然でスムース、単に正確なだけでなく気持ちいいと思えるレベルに達している。ブレーキのフィールも確実で剛性感たっぷり。減速すら楽しい。

ステアリングを切るだけで気持ちが昂るスポーツカーなんて、いまどき他にない。目を三角にして走らせなくともそう思えるのだから、たいしたものだ。スパイダーは、来るべき電動化時代のドライビングファンをも見据えているような気がした。

【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新スーパースポーツ試乗】ステアリングを握るだけで気分が昂まる! フェラーリ・ローマ・スパイダーの人生讃歌
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

もちろん現在はV8が搭載されている。素晴らしいエグゾーストサウンドと切れ味鋭い変速をみせる8速DCTは魅力的。その味わいはやはり格別だ。だが、V8を歌わせなくても楽しい。絶対的なパフォーマンスだけがスポーツカーの楽しさでないことをローマ・スパイダーは教えてくれる。風と青空を感じながらクルマを、否、跳ね馬を自在に操っているという感覚そのものが特別なのだ。最上にして特別な時間を提供してくれる。

誰かと何かを競うのではなく、機械との対話を自分の判断でじっくりとたしなむ。内外装のコンフィギュレーションと共に、その走らせ方にもまた成熟した大人のセンスが必要な跳ね馬である。いま、ドライブフィールが最も甘美なスポーツカーだと思った。