「海外経験を積んでステップアップしたい」「グローバルに活躍したい」「学んだ語学を生かして働きたい」ーー。そう考えて海外赴任を志す若手ビジネスパーソンも少なからずいることでしょう。
海外支社や子会社で経験を積むことは、グローバル展開をする企業で「出世コース」のひとつといえますが、海外駐在員に女性が選ばれるケースは限られているようです。
株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(以下、JAC)が実施した海外駐在員に関する調査では、日系海外子会社へ女性社員が派遣されていると回答した企業はおよそ19%という結果でした。
同社は、海外進出関連業務などのインターナショナル領域で活躍する管理職、エグゼクティブ(役員や幹部)、スペシャリストなどの領域に特化した人材紹介サービス業者です。
海外赴任をめぐる企業の課題とは?
企業は駐在員の性差ではなく、赴任希望者をめぐる現状を課題としてとらえているようです。
調査に応じた企業221社に海外駐在員の派遣をめぐっての課題をたずねると「海外駐在に適した資質を持つ人が少ない(26%)」「社内に海外駐在希望者が少ない(25%)」が過半数を占めています。
JAC社によると、この設問は単一回答式で行っているということです。
課題解決には女性起用が不可欠との提言も
JAC社は、5人の女性海外駐在員へのインタビューを踏まえて、留学や海外就職などにチャレンジには男性よりも女性の方が意欲的であると指摘。
女性の起用は海外駐在要員不足という企業が抱える課題を解決する一助となりうると伝えています。
また、共働き世帯が増えたことも、性差を問わず海外赴任を志すことができない理由のひとつかもしれません。
男女共同参画白書 令和4年版 2-15図 共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移より引用
働く夫と専業主婦の世帯は減少し続けていますが、共働き世帯は増加しています。
2022年の内閣府調査では、およそ1,177万世帯が共働き、いわゆる専業主婦がいる世帯は458万世帯という結果が示されました。
また、米国ベイエリアに滞在し、キャリア構築に関心のある日本人女性コミュニティ「JWIBA」が公開する「ベイエリアの女性駐在員の実態」(日本貿易振興機構(JETRO)のサイトで公開)では、男性駐在員と専業主婦の妻(子供)の形態のみを前提とした駐在員人事規程を見直すべきという提言もされています。
時代の移り変わり、働き方の変化によって性別を問わず、家族の海外赴任に帯同できる企業制度の整備が必要となっていることがうかがえます。
内閣府・男女共同参画局|男女共同参画白書 令和4年版
JETRO|JWIBAがサミット初開催、ベイエリアでの日本人女性活躍に向けた課題議論
JETRO|「海外女性駐在員」に関する調査(調査主体:JWIBA)