クラウンとプラットフォームを共用

1980年代にその絶頂期を迎えた感のある、トヨタ・マークⅡ。ハイソカーを象徴する存在として、チェイサーやクレスタといった兄弟とともに厚い支持を集めたマークⅡであったが、日本の自動車に見られたヒエラルキー的なもの(オーナーの社会的地位を示す階層構造)が薄れていくにつれマークⅡの存在感も薄くなっていった。マークXと車名を改めたのち、その二代目で歴史が終わったときには、しみじみとした感慨があったものである。

今回はそんなマークⅡの中でも、マークⅡという車名としては最後のモデル、十代目のX110型系のカタログをお見せしたいが、まずは実車についてすこし述べておこう。このX110型系は2000年10月に登場したが、その最大の特徴はボディ形式を4ドア・ハードトップから4ドア・セダンに改めたことだった。四代目・X60型系からハードトップがシリーズの中心となり、九代目・X100型系ではセダンが消滅していたマークⅡだが、ここでセダンが復活しただけでなく、主役を奪還したかたちとなる。

サイズ的には全長が短く、背が高くなった一方で、ホイールベースは延長され、凝縮されたプロポーションと広い室内を有するボディとなったが、これはプラットフォームをクラウンと共有した結果でもある。レイアウトは従来通りFRを基本に4WDもあり、サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン。

エンジンは全て直列6気筒DOHC 24バルブ(VVT-i=可変バルブタイミング機構採用)で、排気量は2Lと2.5Lのふたつ。2Lは1G-FE(最高出力160ps)の1種のみ。2.5Lは200psの1JZ-GEを基本に、D-4(直噴)仕様で同じく200psの1JZ-GE、ターボ仕様で280㎰の1JZ-GEの、計3種類が用意されていた。グレード構成は全モデルに「グランデ」の名が与えられ、スポーティ系の「ツアラー」の名は廃されている。ツアラーを受け継ぐグランデiR系には2.5LのターボとD-4のふたつのエンジンだけが組み合わされており、逆に4WDにはそのふたつ以外のエンジンが搭載されていた。

登場2年後の2002年10月にはマイナーチェンジを行い、ボディ前後のデザインなどを変更。スポーティモデルのグランデiR系からは「グランド」の名が省かれ、iR-V/iR-S/iRというグレードへと変化している。翌年にはマークⅡ誕生35周年記念モデルを設定するなどしたのち、2004年11月にはフルモデルチェンジでマークXへと移行を果たしたのである。

これが最後だ!高級ドライバーズセダン「X110型系マークⅡ」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第29回
(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)

真っ暗、というわけではないのだが、ページの地の色が黒いこともあわせて、カタログ全体の印象がどうにも暗い。これはツアラー系の後継シリーズであるグランデiR系のページ。

マークⅡの終焉を思わせる演出が施された(?)カタログ
さて肝心のカタログであるが、マイチェンを受ける前の前期型のものであり、ハッキリ分かる発行年月の記載はないものの「PC0017-0010」というコードと「このカタログの内容は’00年10月現在のもの」という記述から考えて、デビューと同時の2000年10月に作られたものと言ってよいであろう。サイズは297×210mm(縦×横)、ページ数は表紙を含めて全38ページ。

カタログの作りとしては、一点を除いて特に変わったところはない。その一点とは、表紙にちょっとだけ遊びが盛り込まれている点で、それは何かと言うと、中央に大きくレイアウトされた「Ⅱ」の文字の中が切り抜かれていることである。「Ⅱ」の文字の中には女性のシルエットが配された形なのだが、表紙をめくるとそのシルエットは中のページ(表紙を含めてカウントすると3ページ目)の写真のものであったことが分かる、という趣向だ。ただし、表紙と3ページ目は同じ写真であるので、特に驚きがあるというわけではない。

全体の印象としては、ページの地に黒が使われており、陰影や青みを強調した写真で構成されていることもあって、なんとはなしに暗いイメージがある。メカニズムなどの解説ページも、写真のサイズに大小の違いがあまりなく、どうにも単調なように感じられた。そんな中で、表紙のみならずページのあちこちに「Ⅱ」の文字が大きめに配置されているのが興味深い。次の世代からはⅡではなくXになることがこの時点ですでに決まっていたのだろうか、今にして思うと面白いポイントである。

文・秦正史/提供元・CARSMEET WEB

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