カペラ01イメージキャラクターはアラン・ドロン。3代目はすべてを一新したスポーティな存在
カペラの3代目は、正真正銘の「フルチェンジ」だ。エンジン、シャシー、ボディなど、そのすべてが旧型カペラとは違う。駆動方式もまたFRをFFへと変更している。スタイリングの基本フォルムは、クーペ/セダンともにウェッジ基調を採った。一見、平和主義者といったルックスだが、いざ走り出したときのスピード感や底力を、それとなく予感させるムードがある。
エンジンは、新開発4気筒OHCのマグナム・ユニットである。最新エンジンに共通する軽量・コンパクト、効率、レスポンスの良さなどを追求し、性能も燃費も旧型カペラを大きく引き離した。2リッターのMEGI(電子制御インジェクション)付きエンジンは、120ps/5500rpmの最高出力と、17.0kgm/3000rpmの最大トルクを発揮する。このエンジンを積むGT-Xは、メーカーデータによると、0→400mを17秒で走り切り、トップスピードは175km/hをたたき出す。まったく立派なデータだ。旧型カペラよりも1.3秒も速い。


マグナム・エンジンはピックアップがよく、パワフルだ。低中速域のトルクは厚く、実用域での使いやすさも素晴らしい。5〜6%の上り坂を4速で30km/hでスムーズにこなす。最大出力回転数は5500rpmだが、スムーズさは5700rpmあたりまで持続する。
ギアボックスはMTもATも選択できる。ATが3速なのは物足りないが、エンジンとのマッチングはよく軽快な走りを見せてくれる。MTはかなりクロースしたギアレシオで、エンジンの力をフルに引き出せる。シフトフィールも横置きエンジンにしては、非常にいいタッチだ。
ハンドリングの完成度も高い。動きはリニアで軽やか。中でも60扁平のBSポテンザを履いたモデルは、実にシャープな身のこなしを見せつける。コーナリング性能も制動性能も段違いに引き上げられ、ワインディングロードの走りっぷりは、素敵なものだ。
GT-Xは電子制御式の可変ダンパーが装備されるが、可変域の幅はスカイラインよりも広く、ノーマル/スポーツに加え、オート機構もプラスされている。オートにセットしておくと、80km/hを超える速度域で自動的にフロントだけがスポーツ(つまりハード側)に切り替わる。高速安定性が改善され、まずは合格である。
新型カペラは、あらゆる面で進歩している。海外でも高い評価を受けることだろう。
(岡崎宏司/1982年12月号発表)
3代目マツダ・カペラ/プロフィール
マツダのミドルクラス、3代目カペラは1982年9月にFFに大変身。ボディは4ドアセダンと2ドアクーペの2種。5ドアHBはフォード・ブランドからテススターの名で販売された。空力特性を意識したクリーンでシャープなボディ、マグナムと呼ぶ新開発エンジンを採用。足回りをはじめとする基本メカニズムは好評のFFファミリア用をベースに開発。サスペンションは前後ストラットの4輪独立システムを採用していた。


欧州を含めた海外市場を意識した世界戦略車だけに、ハンドリングを中心とする完成度は高く、「1982-1983日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しただけでなく、米国の「1983インポートカー・オブ・ザ・イヤー」も獲得した。イメージキャラクターにフランスの名優アラン・ドロン氏を起用したのも国際モデルであることを印象付けた。カペラは1983年9月に2ℓディーゼル、同10月に2ℓターボを追加。1985年5月のマイナーチェンジでテルスターと同様の5ドアHBが加わった。“俊速、FFスポーツ”を標榜し、機能に優れるだけでなくユーザーの心に響くクルマ作りを“たまらなく、テイスティ”というキャッチで表現したカペラは走り好きを魅了するクルマの代表だった。