クルマを着る感じ、走りのコントロール性抜群!

 待望の日本仕様のロードスターに試乗した。北米仕様車をテストドライブした後、日本仕様でまず確認したかった点が、ドライビングポジションである。新型は、ヨー慣性モーメントの低減と、前後重量配分の適正化のために、エンジンを可能な限りキャビン側に後退させて搭載した。それゆえトーボードは、とくに幅方向がかなりタイトなデザインになっている。右ハンドルのMT車は、左足の置き場をどのように確保しているか、ちょっと気掛かりだったのだ。

【ボクらの時代録】2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目マツダ・ロードスター(NC型)の人車一体フィール
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目マツダ・ロードスター(NC型)の人車一体フィール
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 結論からいえば、「その問題は、何とかギリギリでクリアしている」という印象だった。クラッチペダルの左側にはほとんど余分なスペースは残っていない。それでも最小限の余裕は確保している。

 新型は、「クルマを着る感じ」がとても強い。サーキットで、タイヤが持つグリップ力をほぼ使い切るスピードに達しても、走りのコントロール性、自在度はすこぶる高い。まるで、自分の体を中心にヨーが発生し、コーナリングフォームを自在に作り出していけるかのようだった。
 ただし、動力性能は「フィーリング面で、もう一歩の鮮烈さがほしい」と感じた。加速は満足できるレベルだが、エンジン回転の伸び感やアクセル操作に対する切れ味、そしてサウンドの演出に関しては、もう少しレベルアップがほしい。

【ボクらの時代録】2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目マツダ・ロードスター(NC型)の人車一体フィール
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目マツダ・ロードスター(NC型)の人車一体フィール
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 自社開発した6速MTは、操作性に優れている。従来の4速から6速化したATも進化している。ただしATにはシフトダウン時の「回転合わせ」のロジックは組み込まれていない。マニュアルで操作すると、後輪のグリップ力は大きく変化する。コーナリング中など、それをきっかけに姿勢を乱すシーンもあった。
(岡崎五朗/2005年9月26日号)

3代目マツダ・ロードスター・プロフィール

 2005年8月登場の3代目はプラットフォームからエンジンまで、すべてを一新したオールニュースポーツ。「人車一体」のコンセプトはそのままに、世界中のモータリングシーンに影響を与え、数々のフォロワーを生み出した名車の次世代を具現化した。プラットフォームはRX-8用と共通のアーキテクチャーを用いながら、FRライトウェイトスポーツのロードスター用に新規開発。Z断面のアルミ製P.P.F.(パワープラントフレーム)を採用し、エンジンはフロントミッドシップに搭載。「スポーツカーの理想」とされる前後50対50の重量配分を実現した。パワーユニットは全車2リッター(MT 170ps/AT 166ps)。トランスミッションはMTが6速と5速、ATは6速に進化した。

【ボクらの時代録】2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目マツダ・ロードスター(NC型)の人車一体フィール
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】2005年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目マツダ・ロードスター(NC型)の人車一体フィール
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

開発主査は先代から引き続き貴島孝雄氏が務めた。ちなみに貴島氏は初代トヨタ86&BRZ開発スタート時にチーフエンジニアを務めた多田哲哉氏がアドバイスをもらいに訪ねたスポーツカースペシャリストである。NC型は、ロードスターならではの軽快さとともに、ミドル級スポーツに匹敵する速さと上質さを実現。2006年8月には電動リトラクタブルトップのRHTを追加し、4代目のND型にバトンタッチするまで高い人気を誇った。