全身に包帯を巻いたミイラのような姿、片手に青龍刀(日本刀) などの刃物を持って「トン、トン、トンカラ、トン」 と歌いながら自転車に乗って現れる。平成に入って以降、怪談や都市伝説において語られるようになったこのような現代妖怪、それが「トンカラトン」である。
トンカラトンに遭遇すると「トンカラトンと言え」と言われ、それに応じて「トンカラトン」 と答えると害も無く去って行くと言われているが、答えないかもしくは「トンカラトンと言え」という問いかけがなされる前に答えてしまうと、持っている刃物で切りつけられてしまう。しかも、切りつけられた人物はトンカラトンの仲間にされてしまう。このため、トンカラトンは集団で現れることもあるという。
このトンカラトンの存在は、 1994年に放送されたテレビアニメ『学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!』の第10話「怪人トンカラトン」 及びその原作が、メディア初登場とされていた。作品オリジナルの怪異と考えられてきたが、のちに超常現象研究家並木伸一郎により、アニメ制作者のある人物の故郷で語られていたトンカラトンの噂がルーツである可能性が示唆された。しかしながら、 当人との連絡が取れずじまいであるため、これ以上の調査はなされていない。
このような噂・都市伝説に発展した経緯の仮説として、オカルト研究家吉田悠軌は怪異「カシマさん」 との関連を示唆している。それによると、手足の欠損した女性として語られるカシマさんは、 元々男性それも軍人の姿をした怪異として語られており、それが徐々に女性の姿へと変貌していくにつれて、軍人というイメージから派生していったものがトンカラトンではないかという。軍人はすなわち傷痍軍人であり、青龍刀あるいは日本刀を持っていることや、全身包帯の姿もその名残であるというのである。
この他、ある地域では、夜道を一人で歩いているところに「包帯を巻いてくれ」と声をかけて現れ、従わないとナイフで刺してくるという「包帯おじさん」 と呼ばれる怪異の報告がある。また、 子どもを呼び止め無理やり注射をする包帯だらけの怪人「注射男」 と呼ばれる怪異もある。これらには包帯という共通点もあることから、これに尾鰭が付いた、もしくは他の事情(自転車通行の危機管理という教訓など) が重なったことによってトンカラトンのイメージが出来上がったのではないかとも考えられている。
一方、 実際にトンカラトンと似た存在を目撃したという証言もある。 都内の児童公園にて、 上半身をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにした男性が、自転車に乗って公園内の子どもたちを追い回すという事件が発生していたというのだ。男性は「逃げなくてもいいよ!」 などの言葉をかけるも、 近隣の住民に気付かれて現場から逃走していったという。刃物を持っていればまさにトンカラトンを思わせる事例であり、作家山口敏太郎は都市伝説のモデルになったのではないかと思わせる情報であるとしている。
メディアの初登場から、 強烈なインパクトを与えたトンカラトンであるが、その発祥についてはまだまだ多くの謎が残されている。何より、その名前やキーワードとなっている「トンカラトン」 が何を意味しているのかもハッキリとわかっていない。一説には、 昔の九州での戦の掛け声に使われていた言葉とも言われている。 トンカラトンという名前(言葉)を探ったその先に、 トンカラトンの真の正体があるのかもしれない。
【参考記事・文献】
朝里樹『現代日本怪異事典』
トンカラトンとは?出会うと斬り殺される? その正体や対処法をご紹介
口裂け女、カシマさん…「赤い女」の系譜から見えるものとは?― ―時を重ねてアップデートされる恐怖
【山口敏太郎の現代妖怪図鑑110】包帯ぐるぐる巻き「 トンカラトン」 都内の公園にも出現!?
【文 黒蠍けいすけ】
【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】
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提供元・TOCANA
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