
Point
■中国の外科医により報告された「臓器移植」に関する論文およそ400本を正式に取り消した
■中国は、臓器提供の同意を得ていない死刑囚や「良心の囚人」から無断で臓器を摘出して売買している
■2016年に、中国政府が公式発表した移植回数は年間1万回だったが、実際に病院で行われた回数は、6万〜10万件であったことが判明
中国の外科医が過去に発表した「臓器移植」に関する報告論文およそ400本超が、正式に撤回されました。というのも、移植手術に使用された臓器は、なんと中国の死刑囚から同意なしで摘出された非合法のものだったのです。
無断で臓器を摘出して売買
オーストラリアにあるマッコーリー大学のウェンディ・ロジャース氏は、2000年の1月から2017年の4月までに発表された中国の臓器移植に関する論文をすべて入手。論文数は445本にのぼり、移植回数は実に8万5477回。そして、問題なのは、その内99%が臓器提供者の同意を受けていないことだったのです。ロジャース氏は「研究に関わった中国の臨床医や専門家も、非合法な臓器調達に共謀していた」と報告しています。
中国における臓器提供は、長きにわたって問題視されてきました。2016年に報告された移植回数において、中国政府と同国内にある移植認定病院の報告件数に大きな食い違いが見られています。政府の正式な発表は、およそ1万回だったのに対し、実際に病院で行われた移植件数は、実に6万回〜10万回だったのです。
根深い中国のドナー問題
上記のようなギャップは、刑執行直後の死刑囚の遺体からすぐに臓器を無断摘出していることが原因です。それだけでなく、中国政府により強制的に収容された「良心の囚人」と呼ばれる罪なき人たちから、生きたまま臓器を摘出していたことも関係しています。
そのせいか、中国では待機リストに乗ってから実際に移植を受けるまでの期間が極端に短くなっています。一般的に、臓器提供を受けるには、ドナーがいつ亡くなるか予測できないことやドナーと血液型が一致しなければならない問題もあるため、少なくとも2、3年は待機しなければなりません。しかし、中国では数週間も待てば臓器提供が受けられてしまうのです。
実際、中国まで行って移植を受けた日本人も数多くいますが、その中には、術後のケア不足や移植の失敗により亡くなっている人まで発生しています。もちろん、日本人だけでなく世界中から臓器提供を求めて中国にやってくる患者は現在でも増え続けているのです。この深刻な問題に対して、2017年に「欧州議会」が中国政府に対して、非合法な臓器摘出を非難する文書を正式に通知しました。
中国政府も「囚人からの無断摘出」に同意したのですが、現在の年間移植件数を鑑みると非合法な臓器提供は続けられている様子。倫理を重要視しない中国医療の闇はもっと深いのでしょう。
提供元・ナゾロジー
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