誰も気づかないうちに、謎の「地震波」が20分も世界を駆け巡っていた
(画像=Credit: Getty Images、『ナゾロジー』より引用)

Point
・地震研究家が最初に見つけ、ツイッターで報告した世界に広がる謎の地震波が、話題を呼んでいる
・発信元はアフリカ南東部のマヨット島沖。原因となるような有感地震はなく、いくつかの普通ではない特徴を持っていた
・スロー地震や、マグマ溜まりでの反響など様々な説は出ているが、その原因は依然謎

それは11月11日の朝、世界標準時間の9時30分のことです。世界中を、謎の地震波が駆け巡りました。

振動の中心は、フランスの海外県のマヨット島です。振動はアフリカ各地で観測され、インド洋、太平洋を横断してチリやニュージーランド、ハワイやカナダでも観測されています。

しかし奇妙なことに当初、専門家含め、誰もその地震波に気づかなったのです。そう、一人の愛好家以外は。その発見者とは、アメリカ地震調査所のリアルタイム地震波を見ていた、地震研究家です。彼はまず、@matarikipaxというIDでツイッター上で報告。それを合図に研究者たちはその出処を割り出しはじめ、アフリカの南東沖にあるマヨット島の24キロメートル沖にたどり着きました。

この振動が持つ奇妙な特徴は、20分間という長い持続時間と、17秒という一定の周期を持った単調さ、そして低い周波数です。普通、地震波は何十分も持続しません。継続時間の長い巨大地震でも数分で納まります。断層が破断したときには多くの振動が混ざり合って複雑な波になります。単調な地震波というのは珍しいのです。そして、P波やS波といった実体波は高い周波数を持ちます。

地震が起きると、まずP波と呼ばれる規模の小さな縦波が広がります。この波はS波よりも早く到達するため、緊急地震速報の根拠として使われています。次に大きなS波が到達します。この横波は規模が大きく、地震として感知され揺れによって実際の被害をもたらします。P波とS波は、固体中を伝わる波で、実体波と呼ばれています。それとは別に表面波という遠くまで伝わる、地表と大気の間を伝わる波があります。大きな地震だと、表面波は地球を何周も駆け回ります。

マヨット島から発信された振動は、周波数の特徴から、この表面波に似ていました。しかし、この振動を引き起こすきっかけとなる大きな地震は起きていないのです。

マヨット島が地震とは縁がないということではありません。今年5月には、島での観測史上最も大きなマグニチュード5.8という地震がおきています。最近では余震もおさまっていたのですが、この謎の振動が何らかの地殻活動に関わっているかもしれません。また、マヨット島は火山活動で出来た島でもあります。地底のマグマ溜まりがこの振動の原因を作っているのかもしれません。

有感地震がなかったことや、持続時間からスロー地震だったことが考えられます。実際、マヨット島は7月の中頃から11月の間に6cm東に、3cm南に移動していることが、GPSによる調査で分かっています。

様々な説は出てきていますが、この奇妙な現象をはっきり説明できるものはありません。研究者たちは今後、発信元となった海を調べることで、さらなる情報を得たいと考えています。

提供元・ナゾロジー

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