部下育成の基本はフィードバック

 これまでは「仲が良さそうだから組ませてみよう」などと感覚や情緒で行ってきたことが、データアナリティクスを使うことで、よりロジカルで実用的な人事が可能になってきている。また、チーム編成だけでなく、上司が部下の性格をデータとして把握することで、個々への対応や言動などに気をつけるようになり、無用な衝突などを防ぐことができる。

「何よりも部下育成の基本はフィードバックです。これも一種のスキルなので、学べば高めることができます。例えばポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの使い分けですね。単順に言うと、仕事に対して『褒めること』と『叱責すること』なのですが、これも実証理論が出ていて、比率的にはポジティブが3に対してネガティブが1の割合が最もモチベーションを維持しやすく、成果が高まります」(同)

 ここで大事なのはフィードバックの内容だ。ネガティブな内容だとしても、頭ごなしに叱責するのは逆効果となる。

「人格や性格に対してフィードバックするのはNGです。だらしないとか、怠け者だとか生活態度についてではなく、仕事の課題に焦点化してフィードバックしないと、そもそも伝わらない。そのやり方は、こういう観点で良くなかった。こうすれば成果が出たというふうに客観的な事実に基づいてフィードバックすることが大事です」(同)

 上司としてロジカルでありつつ、真摯に対応することが「育成」となり、部下のモチベーションもアップする。その時に大事なことは「駄目だったら切り捨てる」というマインドではなく、部下の成長を信じられるかどうかだという。

「専門的には『暗黙の知能感』といいますが、人が無意識のうちに持っている、人間の能力や知能の発達に対する感覚のことで、大きく2つに分類されますが、そのひとつである『人の能力は生まれつき固定化されている』という考え方の上司が部下に接しても、実際に部下は成長しないんです。もう一方の『知能は柔軟で変化するもの』という増大的知能観で取り組むというのが、マネジメントを行う上で1番必要な素養だと思います」(同)

 そこまで部下の面倒をみる余裕がない、という企業も多いかもしれない。しかし、マネジメント側の意識改革やスキルを伸ばすことで、人材を切り捨てることなく生産性を高めることができるのであれば、改めて取り組む価値があるのではないだろうか。

(文=清談社、協力=安藤健/人材研究所シニアコンサルタント)

提供元・Business Journal

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