”ルーニー・サッカー”の可能性が見えた後半
三好が指摘するように、ハーフタイムでマインドを入れ替えたバーミンガムは徐々にボールを中盤から組み立て繋がるようになる。特に左サイドから突破し、中央に絞った三好が前線に縦パスを供給すると、次々にチャンスを作り出すことができた。逆転弾も中盤でボールを奪い三好に預け、サイドと中央の選手が連動して相手ディフェンスを崩したことで生まれたものだった。
一口に「ポゼッションサッカー」と言ってもさまざまな形がある。直近5試合を見てきた筆者は正直なところ、ルーニー監督が目指すサッカーがよく見えていなかった。だが今節でその姿が少し見えた気がした。
ーサイドの三好選手が中に絞って攻撃のスイッチを入れる場面が多かったですが?
三好:それが今このチームがやろうとしている部分です。自分がサイドに張っているよりサイドバックを高い位置に取らせて自分は空いたスペースに。逆に相手DFが来たらサイドが空きますし、そこは狙いとしてあります。(前半)バタバタする中でカウンターを受ける場面もありますけど、続けていけばそれが形になると思うので。今日の試合も嫌な取られ方をしてカウンターとかありましたけど、そこは続けていけばいいのかなと思います。
事実、三好や中盤の選手がボールに触れる回数が増えた後半はゲームを支配できるようになり、統計でもポゼッション率53%と過去5試合のなかで最高を記録した。三好がボールを持ち、パスを出す度にプレス席で観戦していたシェフィールドのメディア担当者から「Miyoshi, insane!(三好、やべえ!)」と声が漏れていたのが特に印象的だった。相手チームのスタッフさえも唸らせるサッカーセンスを遺憾無く発揮した三好。直近3試合連続先発とルーニー監督の信頼を掴み出し“ルーニー・サッカー”を実現する上で重要なピースとなっているようだ。
今節の勝利で順位を14位に上げたバーミンガム。三好も「チームの雰囲気も徐々に良くなっている。ここから勝ち点を積み重ねていこうというところで、今日の勝利は勢いに乗る上でも良かったと思います。結果が全ての世界なんで勝てばハッピーですし、良いサッカーをしても負けたら…ね(笑)」と屈託のない笑顔で話してくれた。
11月に入り寒さが厳しくなった北国のイングランド。最高気温も6度前後と、東京の2月並みの寒さとなっており、バーミンガムの本拠地セント・アンドルーズ・スタジアムは晴天にもかかわらず体感温度は5度にも満たない。地元のイングランド人選手でさえも長袖ユニフォームを着用し始めているというのに、この日も半袖でピッチに現れた三好。ベルギー時代に欧州の冬を経験している三好自身「ベルギーでもこんなに寒くなかった(笑)」と語っていたが、その表情は晴れやかだった。