リトラクタブルヘッドライトの低いノーズで個性を主張

 新型アコードは、いかにもホンダらしく個性的だ。リトラクタブル式ライトを採用したサルーンもそうだが、エアロデッキのスタイリングはとくに大胆だ。アコードは同クラスのクルマの中で、いろいろな意味で高級感が高い印象を受ける。モダンで空力性能を追ったボディ面は質感に優れ、ワイドなトレッドがどっしりと落ち着いて見える。  キャビンはサルーン/エアロデッキともに、スペースは十分だ。低いノーズと大きなフロントスクリーンは、パノラミックな前方視界を生み出している。

【ボクらの時代録】1985年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目ホンダ・アコード(CA1/CA2/CA3型)の国際感覚
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【ボクらの時代録】1985年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目ホンダ・アコード(CA1/CA2/CA3型)の国際感覚
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 エンジンは直列4気筒が3種。最強の2リッター・DOHCのパワー/トルクは160ps/6300rpm、19.0kgm/5000rpm。ボア×ストロークは81.0×91.0mmという超ロングストロークだ。「高回転が苦手なエンジンじゃないか」という疑問が湧いても、不思議ではない。が、そこはレースで鍛えたホンダの技術で常識を突き破っている。レッドゾーンは6500rpmから始まるが、何のためらいもなく一気にそこまで吹き上がり、7000rpmでレブリミッターが作動するまでそのまま回り続けるのだ。ロングストロークのビッグフォアとしては、文句なく素晴らしい回り方をする。レスポンスもなかなかいい。

 速さも一級品である。トップスピードは200km/h級の実力。0→400m加速は16秒前後で走り切るだろう。高速性能は文句なし。「さすが16バルブ・ツインカムだけのことはある」と言い切れる。

【ボクらの時代録】1985年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目ホンダ・アコード(CA1/CA2/CA3型)の国際感覚
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンを採用している。この足回りは、効率的なスペース利用と、スタイリングの向上に努力を注いだ結果だ。乗り心地は素晴らしい。路面への当たりのソフトさは、まさに「高級車の感触」。ねばりあるソフトさ、といったタッチで路面の不整をきれいにいなしてくれる。ハンドリングも、軽く飛ばす領域までなら、ドライバーの意思につれ、きれいにラインを描いてコーナーを抜けていく。良路での直進安定性は、非常にいい。それでは、完璧な足なのかといわれれば、残念ながらそうともいえない。大きめの凹凸で影響を受けやすいのと、高速で不整路面を抜ける時の接地性がやや物足りない。とはいえ新型は、「ユーザーの心をひきつけるクルマ作りのコツ」を的確に具現化している。人気者になるに違いない。 (岡崎宏司/1985年8月10日号発表)

1985年 3代目ホンダ・アコード/プロフィール

 アメリカ市場を含めホンダの主力モデルに成長したアコードは1985年6月に3代目に移行。ボディはリトラクタブル式ヘッドライトを採用したセダンと、ロングルーフ形状のエアロデッキ(3ドアHB)の2種。旧型比で150mm長い2600mmのロングホイールベースと5ナンバー枠ギリギリにまで拡大した全幅によって伸びやかなフォルムを構築。クラストップの上質な雰囲気を主張した。パワーユニットは1.8リッターSOHC(110ps)、1.8リッターDOHC(130ps)、2リッターDOHC(160ps)を設定。2.0Siが積む2リッターDOHCはPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)を組み合わせ、全域で気持ちのいいパフォーマンスを実現。トランスミッションは5速MTと4速ATが選べた。

【ボクらの時代録】1985年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目ホンダ・アコード(CA1/CA2/CA3型)の国際感覚
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【ボクらの時代録】1985年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目ホンダ・アコード(CA1/CA2/CA3型)の国際感覚
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

3代目の足回りは、全車が4輪ダブルウィッシュボーン式を採用。優れたロードホールディング性能、しなやかな乗り心地とともにスペース性に配慮し、低いノーズ高を実現した。1988年7月に欧州仕様と共通の固定式ヘッドライトを備えたセダンCAを追加。同年9月には米国工場で生産する左ハンドルのクーペを「USクーペ」の名前で輸入した。3代目モデルはアコードがワールドブランドであることを実感させた意欲作だった。

1985年の時代録/民営化でNTTとJTが誕生

【出来事】つくば万博開催/電電、専売の両公社が民営化によりNTTとJTに/『スーパーマリオブラザース』発売、第1次ファミコンブームが起きる/ミノルタが世界初のAF一眼レフカメラを発売/テレビバラエティ『夕焼けニャンニャン』放送開始、女子高校生ブームが起きる/阪神が球団初の日本一に 【音楽】オリコンシングル年間1位チェッカーズ『ジュリアに傷心』/アフリカ飢餓救済のチャリティコンサート『ライブ・エイド』開催 【映画】邦画配給収入1位『ビルマの竪琴』、洋画興行成績1位『ゴーストバスターズ』

1985年ホンダ・アコード 主要諸元

グレード=2.0Si(セダン)

新車時価格=5MT 198万7000円/4AT 206万6000円

全長×全幅×全高=4535×1695×1355mm

ホイールベース=2600mm

トレッド=フロント:1480/リア:1475mm

車重=1110(AT1120)kg

エンジン=1968cc直4DOHC16V

最高出力=160ps/6300rpm

最大トルク=19.0kgm/5000rpm

10モード燃費=12.0(AT11.0)km/リッター(燃料タンク容量60リッター)

サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク

タイヤ&ホイール=185/70HR13+スチール

駆動方式=FF

乗車定員=5名

最小回転半径=5.0m

提供元・CAR and DRIVER

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