自分率100%の英雄物語を作りましょう。
米国のノースカロライナ大学(UNC)で行われた研究によれば、自分の人生を英雄の物語に落とし込むプロトコル(手順)が開発されました。
研究では、自分の人生を英雄物語に組み込んで再解釈することで、被験者たちは課題に立ち向かう姿勢が強化されると同時に、人生に意味を感じるようになり、より深い幸福度につながることが判明しました。
さらに人生の再解釈は脳機能にも重大な影響を引き起こし、一見してランダムに見えるように細工された文字列から、隠された単語や文章を探し出す能力が有意に高くなるなど、認知機能の強化と思える現象がみられました。
英雄の物語にはいったいどんな秘密が隠されているのでしょうか?
今回はまず英雄の物語の構造が特定のテンプレートに従っていることを解説し、次ページではテンプレートが好まれる理由について説明します。
そして最後のページでは英雄の物語が持つテンプレートを私たちの人生に当てはめる効果について紹介したいと思います。
研究内容の詳細は『Journal of Personality and Social Psychology』にて「自分の人生の物語を英雄の旅として見ると、人生の意味が高まる(Seeing your life story as a Hero’s Journey increases meaning in life)」とのタイトルで掲載されました。
物語は数千年間も同じテンプレを使いまわしている
古代神話から現在のヒット作まで英雄の物語は変らない
人類の物語は、古代の神話から現代の大ヒット映画に至るまで、一つの普遍的なパターンを辿っています。
このパターンは「英雄の旅」と呼ばれ、1949年に神話学者ジョセフ・キャンベルの著書『千の顔を持つ英雄』によって初めて広く紹介されました。
この「英雄の旅」とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

簡単に言うと、これは英雄が冒険に出て、試練を乗り越え、変化して帰ってくるという、物語の基本的な流れです。
このパターンは、世界中の多くの物語で見られ、それぞれの文化や時代によって異なる形で表現されてきましたが、根本的な構造は驚くほど似ています。
また2007年になるとヴォグラーによって、現在の物語にも広く適応できるように修正が行われたものが発表されました。
キャンベルの理論は、古代の『オデュッセイア』や『ギルガメシュ叙事詩』から、近年の『ハリー・ポッター』、『スター・ウォーズ』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに至るまで、幅広い物語に共通する基本的な構造を解き明かしています。
特にスターウォーズの監督として知られるジョージルーカスは、キャンベルの著書を読んで、スターウォーズの初稿がキャンベルの指摘したパターンと不気味なほど一致していることに驚いたと述べています。
しかし、なぜ数千年に渡り、人々は手垢にまみれた同じテンプレートを使い続けたのでしょうか?
理由は3つあると考えられます。