個性を鮮明にしたモデルチェンジ
先代のギャランは「多くの人たちに好かれるクルマ」を目指した。「穏やかないい子」を演じたが、結果として個性も存在感もないクルマになってしまった。そんな先代の反省から新型ギャランは、打って変わって、アグレッシブな姿で誕生した。新型の癖が強く男っぽいルックスは、「そんなに多くの人に好かれなくてもいいから、確実にギャラン・ファンを獲得しよう」という路線への変換と捉えていいだろう。
主力エンジンは、GDIと名付けられたガソリン直噴である。GDIが21世紀の乗用車ユニットの主流になることは、まず間違いない。
三菱のカタログには、従来型エンジン搭載車と比べ燃費とCO₂排出量は35%低減し、出力は10%増加と誇らしげな数値が並んでいる。1.8リッター直4DOHCのGDIを積んだギャランは、150ps/18.2kgmを発揮しながら、10・15モード燃費で16.2km/リッター(AT車)の優れたデータを実現している。素晴らしいスペックである。


実際のフィーリングを報告しよう。GDIエンジンは高い圧縮比で急速燃焼するためアイドル時のトルク変動が基本的に大きく、音もディーゼル的なキンキンした方向になる。しかしアイドル振動は何とか許容範囲に抑えられている。音もキャビン内では、あまり気にならない。ただし、車外騒音だけは気になるレベルである。
走行中の静粛性は基本的には問題はない。とはいえ、カサついた燃焼音はやや耳につく。もうワンランク遮音レベルを引き上げ、静かさを積極的にアピールするほうが新技術の魅力をもっと訴えやすくなるのではないか。
試乗車はAT。発進時の瞬発力、出足の力感には物足りなさを感じた。低速トルクにもうひと息、厚みがほしいという印象だった。最高出力を10%も削れば、低速トルクはかなり引き上げられるということだ。リファインに期待したい。もっとも低速トルクが物足りないといっても、実用上問題があるわけではない。
なお超希薄燃焼での巡航域は110km/hあたりまで、希薄燃焼領域は140km/hあたりまでだ。アクセルを深く踏み込めば通常の空燃比(約15対1)になり、従来車と同様のパワフルな走りが楽しめる。ギャランは「21世紀のエンジン」を搭載した意欲的な存在。それだけにより徹底した磨き込みを期待する。
(岡崎宏司/1996年10月26日号発表)
1996三菱ギャラン/プロフィール
8代目のギャランはレグナムという新型ステーションワゴンとともに1996年8月に登場。「高密度スポーツセダン」を掲げ、三菱の代表らしいシャープなフォルムと先進のメカニズムで存在感をアピール。特徴は主力ユニットのGDI化。GDIはシリンダー内に燃料を直接噴射する世界初の量産エンジン。カタログでは燃料消費とCO₂の排出を35%改善し、パワーを10%改善した「21世紀の心臓」とアピールした。


GDIユニットは、1.8リッターの排気量から150psの最高出力をマークし、10・15モード燃費は18.8km/リッター(MT)とクラス最良。ギャランにはトップモデルのVR-4用に2.5リッター・V6DOHC24V(280ps・MT)も設定されたが、主力は1.8リッターのGDIだった。ただしGDIはハイパワーを実現するためプレミアムガソリンが指定された。このため燃費は良好だったがランニングコストの面では弱点が指摘された。また初期はGDIユニットに不具合が多発。評判を落とした面もあった。ギャランは装備も充実していた。ボディは骨格を太くした安全構造。前席デュアルエアバッグとABSに加え、ナビゲーション機能を備えたMMCS(三菱マルチコミュニケーションシステム)が全車に標準だった。