スタイリングは肉食系快足動物の印象

 新型ギャランは個性的だし、ダイナミックだ。肉食系の快足動物といったイメージのスタイリングは、まるでヨーロッパ車のように映る。そして外観のダイナミックで力強いイメージは、そのままキャビンにつながる。インパネもシートも、骨太でボリューム感たっぷり。広さは4/5座のサルーンとして十分。とくに後席の居住性/居住感覚は超一級品だ。

 シリーズのフラッグッシップはVR-4。新開発の2リッターツインカム16Vに、空冷式インタークーラー付きターボをドッキングしたエンジンは、205ps/6000rpm、30kgm/3000rpmという、クラストップのパワー/トルクを引き出している。エンジンは文句なく強力。6000rpmを超えてもパワーは落ちない。3500rpm以上でグーンと盛り上がるターボパワーはとても刺激的だ。しかもバランサーシャフトの威力で、回転全域にわたってスムーズだし、静粛性も高い。

1.jpg【ボクらの時代録】1987年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。「インディビジュアル4ドア」三菱ギャラン(SNPF/SNGM型)の先進メカニズム
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】1987年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。「インディビジュアル4ドア」三菱ギャラン(SNPF/SNGM型)の先進メカニズム
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 VR-4はセンターデフとビスカスLSDを組み合わせた4WDシステムを備えている。そのうえ、車速と操舵力感応型の4WS(同相のみ制御)も組み込んでいる。サスペンションは、フロントがストラット、リアは変形ダブルウィッシュボーンの4輪独立式だ。ブレーキはABS付き。VR-4は、まるで高度なメカニズムの塊のようなクルマだ。

 西独のアウトバーンでも試乗したが、スピードポテンシャルは素晴らしい。アクセルをフルに踏み込むと、一気に200km/hオーバーのゾーンに飛び込んでいく。パワフルで直接的な加速感は、本当に刺激的だ。ハイスピードゾーンのステアリングの手応えにも、安心感が持てた。ワインディングロードを70〜80%の速さのペースで走るときのハンドリングもなかなかいい。4本のタイヤは強力なパワーを、きちんと路面に伝えムダなく前進する力に変えてくれる。アンダーステアの度合いは、このゾーンまでなら問題にならない。しかもこの領域でも速さは格別だ。限界域ではVR-4はアンダーステアを強めていく。タイトターンの場合はアクセルを戻すと、ノーズだけがニュートラルに戻る感じのタックインを見せる。高G領域では後輪のロールがやや強めに出る。ハンドリング感覚は、外輪側の前後タイヤのショルダー部にかなり負担が集中する、という感じだ。
 新型ギャランは、課題もあるが三菱の意欲的な姿勢を投影している。大いに注目したい。
(岡崎宏司/1987年12月26日号発表)

1987年三菱ギャラン/プロフィール

 1987年10月にデビューしたギャランは、三菱が誇る先進技術を満載。まさに「夢のハイテクセダン」だった。「インディビジュアル4ドア」を標榜し、感性にこだわり、本物の走りを求めるユーザーに満足を与える1台に仕上げていた。駆動方式はFFと4WDの2種。新型の個性を象徴したのは4WDのVシリーズ。中でもトップグレードのVR-4は2リッターDOHC16Vターボ(205ps)+フルタイム4WD(ビスカスカップリング制御センターデフ式)+4WS(4輪操舵)+ABS+4輪独立サスペンションを組み合わせたACTIVE FOUR(アクティブ・フットワーク・システム)を採用。5速MTとの組み合わせで圧倒的なパフォーマンスを見せつけた。

【ボクらの時代録】1987年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。「インディビジュアル4ドア」三菱ギャラン(SNPF/SNGM型)の先進メカニズム
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【ボクらの時代録】1987年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。「インディビジュアル4ドア」三菱ギャラン(SNPF/SNGM型)の先進メカニズム
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

その速さと安定性は当時世界最強レベル。VR-4はその後WRC(世界ラリー選手権)に挑戦。「ラリーの三菱」復活の先兵となるが、それは超一級の走りのポテンシャルがあってこそだった。メカニズム以外にも見るべき点は多く、とくに広い室内空間を実現した車両パッケージングは秀逸。ギャランはセダンとしての基本資質が高い上に豪快な走りが堪能できる逸品だった。スタイリングもシャープなマスクと骨太な骨格が走りを予感させた。