
過半数のユーザーはe-POWERを選択
セレナは従来型の途中でe-POWERを追加。一気に高い販売比率を占めるようになった。新型も2リッターモデルに少し遅れて発売されるや人気が沸騰。40万円以上の価格差があるが、過半数のユーザーがe-POWERを選んでいる。
新型では8人乗りがe-POWERでも選べるようになったほか、待望のAC100V電源(1500W)が設定されるなど、e-POWERの購入を後押しする工夫が凝らされた。テスト車は販売主力のハイウェイスターV(368万6100円)である。新型はプロパイロット2.0を標準装備したルキシオン(479万8200円)の設定も話題だが、高価なこともあり販売比率は1割ほどにとどまる。


スタイリングは従来のイメージを踏襲している。とはいえフロントの雰囲気は大きく変わり、よりインパクトのある表情になった。新型のアクセントとなるフロントドア下のえぐりは、空力特性をリファインするだけでなく、実用性も高める機能アイテム。乗り降りしてみると、乗降性に寄与していることが理解できる。
セレナのプラットフォームは、旧型のキャリーオーバーである。競合するライバルがすでに低床フロアを実現しているのに対し、床はやや高め。乗降時にはワンアクション増える。一方で、広く変幻自在な車内空間や見晴らしのよい視界はこれまでどおり。セレナのよき伝統を新型も継承している。高めの視線に加えて、運転席と助手席のサイドウィンドウ下端がかなり低いため、前席からのドアミラー回りの視界はワイド。他のクルマにはない独特の感覚がある。


インテリアは質感向上とデジタル化が新型の特徴。大きなディスプレイが並ぶインパネには多くの新機能が盛り込まれている。ドライブセレクターはボタン式。賛否の声があるようだが、個人的には好印象。見た目がスッキリとしているだけでなく誤操作の可能性も少ない。魅力を高めるポイントのひとつだと思っている。
荷室関連では、デュアルバックドアの上側だけを開閉できる機能を継承。これは便利だ。
新型は開口部が拡大。ガラス面積が広くなったことで、後方視界もよくなっている。ちなみに3列目シートを格納する際の動作は競合車とは異なり、ワンタッチではない。だが操作力は軽く、手間もそれほどかからない。欠点にはなっていないと感じた。
走りはBEVのような電動感が濃厚。静かでスムーズ、そして力強い
走りは大幅に進化している。走り出してすぐに旧型とは違うと実感する。e-POWERはエクストレイルと同様の第2世代。旧型はもちろん、ノートなどよりも圧倒的に静かでスムーズだ。しかも力強い。
まず、発進してからなかなかエンジンがかからず、モーターで走行するのが好印象。エンジンが始動してもいつかかったのかわからないほど停止~再始動がスムーズな仕上がりにも感心する。車両状態や走行環境に応じてカーナビと連携。エンジン作動タイミングを制御する世界初のエネルギーマネジメント技術が効いているようだ。


動力性能も満足できる。排気量を1.4リッターに拡大した新開発の発電専用エンジン(98ps/123Nm)は、従来の1.2リッターに対して最高出力が14ps、最大トルクは20Nm向上しており、駆動用モーターは27ps増の163psになっている。 パワフルさは、旧型比で段違いだ。持ち前のアクセルレスポンスのよさは、一段とリニアになった。スピードの伸びは十分。従来は高速道路の登坂や再加速の場面で、加速性が鈍る印象があった。新型はスロットル特性が見直された効果もあり、頭打ちになる感覚がかなり薄れた。
静粛性もなかなかのレベル。エンジンのケース剛性向上やバランサーの新規採用、遮音ガラスなどが効果を発揮し、前後席間での会話明瞭度は高い。アクセルを踏み込んでエンジン回転数を上げると3気筒特有の音がするが、それが気になる状況は現実的にはそれほど多くない。


足回りもよく煮詰められている。プラットフォームを従来から流用したとは思えないほど。想像以上に印象が変わっていた。新型は背が高いミニバンらしからぬ運動性能を実現している。開発関係者によると、重視したのは「クルマ酔いをなくすこと」だったという。そのために、突き上げによる頭部の急激な動きや不規則な揺れの軽減を図った。これが走りにも好影響を与えたようだ。直進安定性は高く、走りには、正確さと一体感がある。
新型は高速道路のジャンクションやS字コーナー、レーンチェンジなどでイメージしたラインをトレースしやすい。しかも挙動が乱れない。従来なら揺り戻しが起こりそうなシチュエーションでもスムーズにこなす。無駄な挙動が出にくいことは、後席の同乗者のクルマ酔い解消につながるだろう。
気になった点は、やや路面感度が高いこと。荒れた路面ではバタつきと微振動が感じられる。段差や突起を通過した際の衝撃音が大きめな点もリファインを期待する。