日本のストリートアートシーンの創成期から現在まで、カリスマ的な存在であり続けるアーティストKAMI(カミ)氏の約6年ぶりとなる個展「1999」がSNOW Contemporaryで12月8日(金)~2024年2月10日(土)の期間、開催される。
多くのアーティストにリスペクトされ、カリスマ的な存在であり続けるアーティスト、KAMI氏の個展へ訪れて欲しい。
1999年を回顧する思いを込めた展示
KAMI氏は、SASU(サス)氏とのユニットであるHITOTZUKI(ヒトツキ)のアーティストとして知られているが、HITOTZUKIとして制作活動を始める1999年以前よりソロアーティストとして活動をおこなっていた。
同展はKAMI氏自身が、2000年代に向けた希望で満ち溢れていた時期、多くの出会いから現在の曲線を活かした作風が確立されたという印象的な1999年を回顧する思いを込めた展示となる。
「グラフィティ」から「ストリートアート」へ
日本の伝統文化が残る京都で育ち、スケートボードカルチャーに影響を受けたことによって生まれたKAMI氏の描く力強いラインは、「余白」や「間」といった日本的な要素とともに、当時具象が主流であったグラフィティシーンに独特な抽象をとり入れ、大きな影響を与えた。
それまではスプレーを用いたアルファベット文字や西洋的な絵柄が描かれることが多かったグラフィティに対し、ペンキやマーカーで日本的な要素と西洋のストリートカルチャーを融合させた同氏の登場は、当時のシーンに強烈なインパクトを与えた。同氏の存在は「グラフィティ」から「ストリートアート」へと多様な表現を展開させるその転換点のまさに中心にあり、同氏の表現は個々のアーティストへの影響はもとより、日本のグラフィティ/ストリートアートのシーン自体を大きく更新した。
1990年代後半、KAMI氏はアメリカで、現在のストリートアートから発祥したミューラル(壁画)ムーブメントの始まりとも言えるBarnstormers (バーンストーマーズ)に初期メンバーとして参加したことで、現在の表現にいたるヒントを得たと言う。
その後、SASU氏と共にヨーロッパ各国のミューラルムーブメントに参加し、2004年にはイギリス URBIS美術館にて開催された「Ill Communication Ⅱ」に出品し、HITOTZUKIとしての活動が本格化していく。
日本においてもストリートアートの発展に繋がった中目黒のオルタナティブスペース「大図実験」の主要メンバーとして活動。2005年には「X-COLOR / Graffiti in Japan」2010年には「六本木クロッシング:芸術は可能か?」に参加し、スケートボードのセクションを用いたインスタレーションで話題を呼んだ。
新作キャンバス作品約10点を紹介予定
KAMI氏の作品の最大の特徴は、前述した「ライン(曲線)」と独特の「間」にある。同氏の描くミニマルなラインは内側と外側を分ける類の線ではなく、軽やかなリズムとフローによって周囲の空間を異化しつつも調和させる特殊な魅力に溢れている。
同展では同氏の原点とも言えるこの時代の貴重な資料を公開するとともに、当時の熱量や現在にいたるまでの表現が融合した新作キャンバス作品を約10点紹介する予定だ。
現在、ストリートアートのシーンはかつてのアンダーグラウンドでマイナーな存在から、世界のアートの一端を担う役割を果たすようになった。多くのアーティストにリスペクトされながらも一般にはあまり知られていないアーティストを「Unknown Famous Artist(知られざる有名アーティスト)」と呼ぶことがあるが、アート界においてKAMI氏はまさしくその一人と言えるだろう。
同展を通じてアーティストKAMI氏の魅力を体感してみてはどうだろう。
1999
会期:12月8日(金)~2024年2月10日(土)13:00~19:00
休廊:日・月・火・祝日
冬季休廊:12月24日(日)~2024年1月9日(火)
会場:SNOW Contemporary
所在地:東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
入場:無料
(角谷良平)