同調査はその数日後に再度アンケートを取った結果でもミレイ氏(50.7%)、マサ氏(49.3%)という非常に僅差となっている。

一方、10月25日付「ペルフィル」が掲載したProyección の予測を見ると、44.6%がマサ氏、34.2%がミレイ氏、8.3%がまだ誰に投じるが未定、7%が投票しないという結果となっている。これは10月23日と24日に1459人を対象にした調査結果である。

この調査によると、ブエノスアイレス州でマサ氏が断然優勢であるということ。それとブルリッチ氏に投じた有権者の60%がまだ誰に票を入れるか未定だとしている。しかし、投票が1週間後に迫った時点でコルドバ州でミレイ氏が70%以上の支持票を集めているという予測が出ている。ブエノスアイレス州が一番の票田で、そこは伝統的に正義党が有利である。ところが、2番目の票田であるコルドバ州でミレイ氏がマサ氏を大幅に引き離しているということは、ミレイ氏がトータル票数でマサ氏を上回る可能性が出ている。

ところが、51%の市民が政府からなんらかの補助金を受けている。マサ氏の戦術は、ミレイ氏が勝利すれば、この補助金が大幅に削減されると言ってミレイ氏の勝利に貧困層の市民が恐怖を抱くように誘っている。

正義党は資金のバラマキで票を稼いでいる

正義党アルベルト・フェルナンデス大統領のこの4年間の政権は610%のインフレを記録しており、インフレは留まるところを知らない状況にある。

40%の貧困者がいる同国でインフレがさらに上昇すると生活はより一段と厳しくなる。その上、生活補助金が削減されるようになると貧困者は窮乏に陥る。

上述したように、ミレイ氏が大統領になると貧困者はさらに窮乏するようになるとマサ氏は訴えて貧困層の間からも票を集めている。しかも、正義党は資金力がある。マサ氏に投票することを約束させてお金を配っているのである。そしてマサ氏は正義党本来のペロン主義派の政治を行うとして、キルチネール派とは一線を引く構えである姿勢を表明している。

ミレイ候補は3位が獲得した票を貰うことを期待している

3位だったブルリッチ氏を支えていたマクリ前大統領のグループは決定選に入ることができずグループが分裂した状態にある。というのも、このグループはもともとブルリッチ氏とブエノスアイレスの市長であったラレタ氏の間での争いがあり、予備選挙で勝った方が大統領選の候補者になるという合意があった。

しかし、今回の決定選から落ちたことで、このグループの団結は崩れている。しかもラレタ氏は当初マクリ前大統領の後継者とされていたが、マクリ氏はブルリッチ氏を強く支援するようになった。さらにこのグループには急進市民同盟も加わっていたが、マクリ氏とブルリッチ氏がミレイ氏を支持することを表明したことから急進市民同盟は逆にマサ氏の方に接近している。

マクリ氏はミレイ氏を支持するのに1500万ドルを選挙資金として用意した。その代りにブルリッチ氏を含め4つの閣僚ポストを要求しているという。それをミレイ氏は受け入れた意向だとされている。

これから11月19日まで選挙キャンペーンは激しさを増している。

この大統領決戦投票で注目されるのは正義党キルチネール派の20年余りの政権運営でアルゼンチンは最悪の経済状況に突入し、貧困層は急増。この正義党の政治にくさびを打ち込んで新しい政治を目指すミレイ氏が大統領に成る可能性を秘めた投票なのである。

残念ながら日本の場合は30年以上続いている進展のない自民党の政治にくさびを打ち込めるような政治家の登場するのはいつのことであろうか?

アルゼンチンの国会 Armando Oliveira/iStock

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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