水の中に生息する魚は、水中の環境変化に敏感であり、そのことを利用した漁業もかつては行われていました。しかし近年では法律で厳しく禁じられています。

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「毒成分」を使った魚採りは違法行為 植物由来のものであってNG?

海に唐辛子を撒く動画がプチ炎上

先日、とある釣り系YouTuberが投稿した動画が、ネット上で話題となりました。「餌に唐辛子を混ぜたら魚は釣れるのか」というような内容の動画で、餌のオキアミに激辛唐辛子の粉を混ぜ込んで釣りをしているのですが、その際に撒き餌としてなのか海上に直接、唐辛子の粉を投下するシーンがあり、これが炎上のもととなったのです。

「毒成分」を使った魚採りは違法行為 植物由来のものであってNG?唐辛子(提供:PhotoAC)

激辛唐辛子を撒くという行為は通常の釣りでは行われることはなく、その効果は不明です。ましてや餌に練りこむならともかく、海に直接撒くという行為は魚を寄せるためにはまず無意味であろうというのは、普通に考えればわかります。

「人間でさえ苦しむほどの辛さのものを海に撒いて、生物に悪影響が出たらどうするんだ」「見ていて気分の良いものではない」という意見があったようですが、一釣り人としてその感覚もわかります。

植物由来でも「毒を撒く」と違法に

実際、釣りや漁の際に何らかの成分を撒く行為は厳しく規制されていました。現在でも撒き餌そのものを使ってはいけない釣り場や、撒き餌にアミエビやオキアミを使ってはいけないところ、赤土などの添加物を禁止しているところはあります。

地域的なものだけでなく、全国的に(つまり法律で)使用が禁止されているものもあります。それは「毒成分」。かつては毒を撒いて魚を獲る「毒もみ」という漁法が行われていたのですが、現在では水産資源保護法により禁止となっています。

「毒成分」を使った魚採りは違法行為 植物由来のものであってNG?山椒の実(提供:PhotoAC)

この場合の毒には、人体に対して悪影響を及ぼすものだけではなく、サンショウやエゴノキのような人には悪影響をもたらさない、植物由来の魚毒も含まれています。

唐辛子を撒くのは犯罪?

さて、上記のことを踏まえると、激辛唐辛子を海に撒くという行為もまた犯罪のように思えます。

しかし唐辛子の辛み成分であるカプサイシンは、よほど大量でない限り魚に対して毒性を発揮することはないと思われます。そもそも飼料に唐辛子を混ぜて養殖されているブリのブランドも存在しているほどで、海に向けて直接唐辛子を撒いたとしても、それが悪影響を及ぼす可能性はあまりなさそうです。したがって、この行為が犯罪となる確率は極めて低いと思われます。

「毒成分」を使った魚採りは違法行為 植物由来のものであってNG?撒き餌に何入れる?(提供:PhotoAC)

しかし影響がないとしても、あくまで魚に対してであって、他の海洋生物の中にはもしかすると唐辛子のカプサイシン、あるいは粉末状になった唐辛子そのものが悪影響をもたらしてしまうものもいるかもしれません。

海に強いインパクトをもたらす「釣り」という行為を一個人の趣味として行っている以上、釣り場の汚染をもたらしうる行為には敏感であるべきです。あまり不用意に「必要かどうかわからないもの」を海に撒き散らす行為は慎むべきではないかと思います。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>