某テレビ番組でフィーチャーされ有名になった「池の水抜き」。外来種駆除のために行われると思われがちですが、実はもっと多くの目的で行われる年中行事です。

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「池の水を抜く」目的は外来種駆除以外にアリ 地域の収穫祭の意味合いも

秋は「池の水を抜く」季節

米の収穫も終わり、田んぼの水が完全に枯れるころ、各地のため池では「池の水抜き」が実施されます。某テレビ番組のタイトルにもなっていることから最近では知名度が高いですが、実際どのような仕組みで池の水が抜かれるかについてはご存じでない人のほうが多いと思います。

「池の水を抜く」目的は外来種駆除以外にアリ 地域の収穫祭の意味合いもため池(提供:PhotoAC)

ため池は多くの場合その一部または全部がコンクリート製の築堤になっているのですが、そこには数個の水抜き穴が縦に列をなすように並べられています。そこには通常は「杭」が刺さっており水が出ていかないようになっていますが、水抜きの際にはその杭を抜き、水を抜いていきます。

上から順に杭を抜いていくことで、水位を調整することができます。全部の杭を抜けば、すべての水が抜けていきます。小さいため池でも数時間、大きいため池なら水が抜けるまでに数日かかることもあります。

なんのために抜くの?

比較的時間と労力が必要となる「池の水抜き」、果たしていったい何のために行われるのでしょうか。

例のテレビ番組では、池の水を抜き、そこに生息している外来種を駆除していくことが主眼となっています。多くの土地でため池は貴重な在来種の宝庫となっており、外来種駆除も非常に重要な行為なのですが、本来の目的はそこではありません。

「池の水を抜く」目的は外来種駆除以外にアリ 地域の収穫祭の意味合いも水が抜かれた池(提供:PhotoAC)

ため池は地表を流れる雨水や沢の水を貯水して作られるのですが、その際に水だけでなく砂泥も一緒に流れ込んでしまいます。そのためため池を使い続けると砂がたまり、徐々に浅くなっていってしまいます。それを防ぐために年に一度水を抜き、土砂を除去する必要があります。

加えて池の底に日光を当てることで微生物の働きを促進し、水の汚れの原因物質を分解させ、その後の水質を向上させることも目的のひとつです。

地域のレクリエーションでもある

このように、基本的には池の環境管理の一環として「池の水抜き」は行われるのですが、実はほかの理由もあります。

昔から、ため池は用水池としてだけでなく「養殖池」としても用いられてきました。フナやコイなどの食用魚を放しておき、池に流れ込む有機物や小動物を食べて大きくなるのを待ちます。

「池の水を抜く」目的は外来種駆除以外にアリ 地域の収穫祭の意味合いも水を抜いて採ったフナ(提供:茸本朗)

そして大きくなったフナやコイを漁獲するのが、まさに「水抜き」の時。集落総出で水を抜き、魚を捕まえてみんなで料理して食べるという、いわばレクリエーションとなっていたのだそうです。つまり「池の水抜き」は、ある意味「収穫祭」的な側面もあったのだといえます。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>