ポーラ美術館は、HIRAKU Project Vol.15「大西康明 境の石」展を12月16日(土)~2024年5月19日(日)の期間、開催する。

美術の表現と美術館の可能性を「ひらく」という思いが込められた同プロジェクトは、来館者はだれでも観覧料無料で、アトリウム ギャラリーにて楽しむことができる。

“境界”への意識を問いかける作家による大型インスタレーションを観にポーラ美術館を訪れて欲しい。

《境の石 大阪》2022年 展示風景:「ART OSAKA 2022 Expanded」クリエイティブセンター大阪、2022年

《境の石 大阪》2022年 展示風景:「ART OSAKA 2022 Expanded」クリエイティブセンター大阪、2022年

大規模なインスタレーション作品を数多く発表してきた大西康明氏

HIRAKU Projectは、過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介する展覧会シリーズ。第15回目となる今回は、空間への彫刻的なアプローチにより大規模なインスタレーション作品を国内外で数多く発表してきた大西康明氏を紹介する。

大学時代に彫刻を学んだ大西氏は、型取り作業の経験から、ポジとネガの関係性や、ものそれ自体ではなく、その周囲を把握することに関心を持ち、これまで一貫して余白や空洞、体積、境界などをテーマに制作してきた。

写真:ヨシダミナコ

写真:ヨシダミナコ

銅箔を素材とした作品の新作を展示

同展では、大西氏が近年取り組んでいる銅箔を素材とした作品の新作を展示する。銅箔は、多くの電子機器の内部で重要な役割を果たしているが、人の目に触れることはなく、多くの人はほとんどその存在を意識することもない。大西氏は、人々の日常を裏側から支える銅箔をその機能から離し、河原の石に被せて叩くことによって成型し、大型のインスタレーションへと組み上げていく。

長い時間をかけて地表を移動してきた無数の石の表面には、これまでに削られ磨かれたことによる物理的な喪失と引き換えに、途方もない時間の蓄積と、この地球の記憶が宿っている。

大西氏が生みだす銅箔は、型取り作業を通してそうした不在/存在を提示するとともに、ものごとを認識するためには表層を知るだけでなく想像力を豊かに働かせることが不可欠なこと、あるいは想像力を以てしてもすべてを見通すことはできないことをも、示唆している。

そこにないもの、見えないものに焦点を当てる大西氏の作品は、この複雑で多様な世界を、人々がより自由で柔軟な感覚によって捉えるための助けとなることだろう。

HIRAKU Project Vol.15「大西康明 境の石」展を目的に、箱根へ出かけるのも悪くない。

HIRAKU Project Vol.15「大西康明 境の石」
会期:12月16日(土)~2024年5月19日(日)会期中無休
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:ポーラ美術館1F アトリウム ギャラリー
所在地:神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭1285
観覧料:無料

同時開催「モダン・タイムス・イン・パリ 1925―機械時代のアートとデザイン」
会期:12月16日(土)~2024年5月19日(日)会期中無休
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:ポーラ美術館 展示室1、2
※別途入館料が必要

(角谷良平)