オバマが「彼らの助けなしに子供たちを救えない」という「彼ら」とはハマスだ。ハマスと話し合えというのだ。が、ネタニヤフ首相は「停戦はイスラエルがハマスのテロリストに降伏することを意味する」と述べた。イスラエルはテロリストには妥協しない。テロが連鎖することを知っているからだ。

ガザでの惨劇は続いている PRCS(パレスチナ赤三日月社) HPより

筆者には、ガザの現状を見て思い出す先の大戦の出来事がある。それは44年9月からの「ペリリューの戦い」だ。といっても、4日で攻略するつもりの米軍の予想を裏切って、島中に巡らせた塹壕を使った籠城ゲリラ戦で2カ月半も抵抗した日本軍の「戦いぶり」ではなく、その前年の出来事だ。

当時、ペリリュー島には899人の島民が暮らしていた。1万余の兵と共に島を守備する中川州男隊長は、それまで塹壕掘りなどに駆り出していたこれら島民全員を、43年9月から44年8月までの間にパラオ本島とコロール島に疎開させたのだ。

「一緒に戦いたい」と申し出る島民を、中川は「貴様らと一緒にわれわれ帝国陸軍が戦えると思うか」と一喝したという。中川の真意が、足手まといになると考えたか、はたまた米軍との戦いの巻き添えにすることを避けようと考えたか、どこにあるかは判らない。が、島民はみな無事だった。

今般イスラエルは、ハマスがトンネルを掘り巡らせて軍事拠点化しているガザ北部の住民に対して、南部への避難を呼び掛け、侵攻まで間を開けた。これに対し、ハマスが住民の避難を阻止しているとの情報もあるし、約7割に当たる70万人が南部に移ったとの情報もある。

病院や学校の地下に軍事施設を構築し、南部に避難しようとする住民を阻み、拉致した2百数十名の人質と共に人間の盾にするといったハマスの行為が事実とすれば、これもテロに他ならない。ペリリューの島民に対して、日本軍が玉砕を覚悟する中で行ったこととは、余りに隔たりが大きい。

こうした今と過去の出来事を知ってか知らずか、「彼ら(ハマス)の助けなしに子供たちを救えない」としつつ、ハマスとイスラエルに「道徳的同等性」を与えるオバマ発言に、筆者はとうてい同調できない。非は、イスラエルにテロを行い、ガザ住民と人質を盾にしているハマスにある。

が、打開策がない訳ではない。先月16日、NHKの取材に応じネタニヤフ首相の上級顧問マーク・レゲブ氏がハマスとの停戦の可能性について、最終的にはハマス解体が不可欠だという認識を示しつつ、こう述べた。

彼らが武器を捨てて降伏するのであれば、停戦はできる。ただ残忍な攻撃を仕掛けたハマスが隣人になることには同意できない。

テロ集団ハマスの降伏か、あるいは「ペリリュー」を「鏡」にして人間の盾を解くか、どちらかが「オスロ合意」に戻る第一歩だ。イスラエルへの非難は、それ以降を見てすれば良い。

付言すれば、ロシアとウクライナが「戻るべき時点」と筆者が考えるのは、ウクライナ(とベラルーシ・カザフスタン)が領土保全や政治的独立などと引き換えに、ロシアに核を移転した「ブダペスト合意」だ。その30周年は来年である。

バイデン氏の仕事はますます難しいものに 10月のネタニヤフ首相との会談 同大統領SNSより

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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