南極基地ルンバ「アーニー」と「バート」の引き裂かれた友情
南極基地で働くルンバのうち1台は、「アーニー」と名付けられています。
彼には同じフロアを掃除するパートナーのルンバ「バート」がおり、スタッフたちから「ソウルメイト」として扱われていました。
(バートとアーニーという名前は、アメリカのテレビ教育番組「セサミストリート」に登場するキャラクターおよびコンビ名です)
しかし2019年、アーニーが別のフロアを掃除するようになると、「彼らはすれ違いになり、階段という障壁によって永遠に引き離された」というジョークがスタッフたちの間に広がりました。
この言葉は、南極点望遠鏡(SPT)チームの1人であるエイミー・ロウィッツ氏のものです。
彼女によると、「毎年、夏に新しいグループがやってくるときに、私はこのジョークを語りました」とのこと。
ちなみにロウィッツ氏によると、現在アーニーとバートは同じフロアで働いており、「彼らの願いは叶った」ようです。
The loneliest Roomba; the Roomba cleaning the South Pole station hallways! His name is Bert. #southpole #vacuum #science #antarctica pic.twitter.com/Oq1OzAaIGD
— South Pole Telescope (@SPTelescope) February 8, 2018
しかし、アーニーの喜びは長続きしませんでした。
2020年1月、アーニーが突如姿を消し、行方不明となったのです。
「自宅を掃除するルンバが、ベッドの下に入ったまま出てこない」など、一時的な行方不明はたまにあるものですが、南極基地内でも同様のことが生じたようです。
そして、ルンバが大好きなスタッフたちにとって、アーニーの行方不明は「黙ってはいられないビッグイベント」となりました。
南極基地での「ルンバ失踪事件」、そしてスタッフから要求される「身代金」
「アーニー失踪事件」は、スタッフたちの間で瞬く間に広がりました。
南極点望遠鏡チームのX(当時Twitter)には、「最愛のアーニーが行方不明です」という張り紙の画像が投稿されるほどでした。
At the South Pole, the beloved #roomba Ernie is missing! His roomba partner Bert is distraught, so people are putting up flyers in the search to find him, and have even prepared a small memorial at his docking station! #southpole #Antarctica pic.twitter.com/WHVC94Rjga
— South Pole Telescope (@SPTelescope) January 29, 2020
その投稿の中では、「パートナーのバートは取り乱しており、人々はアーニーを探すためにビラをまいたり、小さな記念碑を用意したりしている」とも述べられています。
そしてこの事件は、(悪ノリするスタッフたちによって)さらなる展開を迎えます。
「クッキーモンスター」と名乗る2人組とアーニーの写真(おもちゃの銃を突きつける写真、アーニーを階段から突き落とそうとする写真)が載せられた張り紙が、基地調理室の外に張られたのです。
The beloved South Pole #roomba Ernie has been found, but apparently a ransom of cookies is being requested by two masked captors! #southpole #Antarctica pic.twitter.com/8kQnQSZoSq
— South Pole Telescope (@SPTelescope) January 30, 2020
そこには、「アーニーが生きている姿をもう一度見たければ、チョコチップクッキーの入ったトレイを指定の場所に置け。そうすれば無事に返してあげよう」という、身代金の要求も書かれていました。
アーニーは基地のどこかで発見されたのでしょう。しかし愉快な誘拐犯の手に渡ってしまったようです。
スタッフたちはこのことで大いに盛り上がり、中には「誘拐犯によって、既にアーニーは命を落としている」と述べて、そのことを悼む替え歌を作る人もいたようです。
とはいえ最終的に、アーニーはチョコチップクッキーと引き換えに返還され、バートと再会することができました。
Ernie has been returned! Pictured here with his second floor soulmate #roomba Bert, at the memorial erected at his docking station while he was missing. Both are back to work again at the South Pole! #bert #ernie #southpole pic.twitter.com/ImWcK5FMmx
— South Pole Telescope (@SPTelescope) February 3, 2020
ロウィッツ氏によると、このような「悪ノリ」は、基地で働くスタッフたちにとって必要なことなのだとか。
南極の基地では、人々が考える以上にやるべきことがたくさんありますが、変化は稀です。
そのため、スタッフたちは努めて自分たちを楽しませる必要があり、アーニーの失踪事件は、彼らを大いに興奮させるユニークなイベントとなったのです。
アーニーを含む「南極点のルンバ」はこれからもスタッフたちに愛されていき、様々なストーリーを紡いでいくことでしょう。
参考文献
Roombas at the End of the World Robotic romance, ransoms, and raccoon suits at the South Pole