ヨルダンもガザ難民の受け入れを拒否している。同国は過去、多くのパレスチナ人の入国を許可した。その結果、人口の3分の1はガザまたはヨルダン川西岸の出身者だ。ガザからヨルダン川西岸までの回廊を設置する案について、ヨルダンの現国王アブドゥッラー2世は直ちに拒否し、「ヨルダンには難民はいらない」と語っている。同時に、ヨルダンはパレスチナ人に対して「あなた方が一旦、パレスチナ以外に出国すれば、再び入国できなくなるだろう」と指摘し、自身が住んできたパレスチナから出ることを避けるように呼び掛けている。

シリアは10年以上の内戦下にあった。アサド政権にとって国の立て直しが先決だ。一方、レバノンはシリアからの難民で溢れている。人口約600万人のうち約150万人がシリアからの内戦避難民だ。パレスチナ難民を受け入れる余地がない。

カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦は難民の宿泊施設に資金を提供できるが、西側からの裕福な外国人以外の外国人、難民の入国を認めていない。イランはハマスの最大の支持者だ。ガザからパレスチナ人の大量出国はイランの利益とはならない、といった具合だ。

ドイツ民間ニュース専門局ntvのケビン・シュルテ記者は11月4日、「なぜアラブ諸国はパレスチナ人を恐れるか」という記事で、「アラブ世界はパレスチナ人に同情しているが、潜在的には彼らを危険な番犬と見なし、自分たちの寝室や子供たちから遠ざけたいと考えている。番犬は寝室ではなく庭につながれ、敵(イスラエル)に対して吠えるべきだと思っている」と書いている。

アラブ諸国はパレスチナ問題を自国の安全装置のように考えているのだろう。パレスチナ人にとって不運といわざるを得ないわけだ(「『パレスチナ問題』をもう一度考えよう」2020年11月20日参考)。

ガザでの惨劇は続いている PRCS(パレスチナ赤三日月社) HPより (編集部)

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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