中東には欧州系が入って体制を作ったが、やり方が良かったか悪かったかは別にして、成功したためしがない。イランに王様を配したが途中で倒され、最後は米国がアフガンから撤退し、中東は自由となった。
中東の紛争を何度も取材に行ったが、「何で争っているのか」と両方に聞いても、はっきりと理解できなかった。宗教に端を発する民族間の問題や、それによって起こる文化摩擦の歴史は理解できる。が、その先には常に「暴力」と「破壊」によってしか解決策を見出そうとしない。そのことが理解できない。
ヨーロッパにおける壮大な移民事業が失敗したのは、イスラム圏の人々を無差別に入れ過ぎたからだと断じていい。EUは一旦入国すれば、EU加盟国のどこに行ってもいいというシェンゲン協定がある。この協定が出来た時にはEUの人たちの温かさ、寛大さに感嘆したが、英国は結局、我慢しきれなくなって、元のイギリスに戻ったのである。
今の世界情勢で最悪なのは、イスラム世界が1つの力になり、ロシアと結びつくことである。一方のEUは個性を求める分散化の方向にある。この動きにあるとすれば、2つの動きを食い止めなければならない。少なくともイスラム世界がプーチンの下について、下僕のようになるのが最悪だ。プーチンの弱みは経済である。EU側の経済圧力を強めて、ロシア経済を崩すのが一番だろう。
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屋山 太郎(ややま たろう) 1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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