国立大学法人岡山大学は、一般社団法人「にじーず」の協力のもと、LGBTユース(10代から20代の子ども・若者)を対象としたメタバースでの交流システムを構築したことを発表しました。

このプロジェクトは、国庫補助事業として、こども家庭庁の「令和5年度NPO等と連携したこどもの居場所づくり支援モデル事業」に採択されました。

こども家庭庁|こどもの居場所づくり

LGBTユースを孤独から救う

いわゆる性的マイノリティをめぐる社会的認知が向上し、肯定的な社会変化が進む現代。その一方で、岡山大学によるとLGBTユース層は悩みを相談できる場所や機会が不足しており、引き続いて生きづらさを抱える、自殺におけるハイリスク層だと指摘しています。

認定NPO法人 ReBitが、2022年10月に公開した12〜34歳のLGBTQ当事者2,670人におこなった調査では、10代の回答者の48.1%が自殺念慮(自殺することについて思いをめぐらすこと)、14.0%が自殺未遂、38.1%が自傷行為を過去1年間に経験したと回答しています。

さらに同調査で「普段からセクシュアリティについて安心して話せる相手や場所がない」と回答した当事者は、10代で47.2%、20代は36.9%となったそうです。日頃からセクシュアリティについて安心して話せる・話す場所が「ある」と答えた層は、「ない」と答えた人たちと比較して自殺念慮が12.2ポイント、自殺未遂が2.2ポイント、自傷行為が8.0ポイント下がっている結果を示しています。

このように、悩みを相談できる場所や機会を増やし、LGBTユースを孤独から救うことは重要な課題のひとつです。

【調査速報】10代LGBTQの48%が自殺念慮、14%が自殺未遂を過去1年で経験。全国調査と比較し、高校生の不登校経験は10倍にも。しかし、9割超が教職員・保護者に安心して相談できていない。

2024年1月にメタバース交流会を予定

このプロジェクト始動の背景として岡山大学は、とくに地方エリアにおいてLGBTを支援する施設や団体が不足し、当事者らがコミュニティや支援にアクセスする難しさをあげています。

また、実際に交流会へ足を運び参加するには、精神的なハードルも高いとして、居住地域の制約を超え、匿名性とプライバシーを保ちながら、アバターを通じて自由に交流できるメタバース空間での支援を実現しようという取り組みです。

本プロジェクトは、トライアルを既に2回実施。参加者からは「自由な姿で参加できるのは楽しかった」などの意見が聞かれたそうです。2024年1月には第1回の交流会を開催する予定です。