東南アジア各国でハーブとして珍重される「魚臭い草」。わが国でも少なからぬ人が口にしたことがあるはずです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ユニークなハーブ「魚腥草」
料理を彩り、食欲をかきたてるハーブ(香草)。世界各地に様々な種類のハーブが存在しており、地域の食文化と密接にかかわっています。
そんな種々のハーブの中には、パクチーのように非常にユニークな香りを放ち、食べる人を選ぶものも少なくありません。今回紹介する「魚腥草(ぎょせいそう)」もそのひとつです。
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魚腥草は東~東南アジアで広く愛されているもので、とくに中国南部では食卓に欠かせないものとなっています。その字の通り「魚のような生臭さ」があり、食べなれない人が口にするとウッとえづいてしまうかもしれません。
その正体は「ドクダミ」
この魚腥草、わが国では「ドクダミ」という名前で呼ばれる野草です。きっとこの名前は多くの人が聞いたことがあるのではないかと思います。
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ドクダミはとても身近なところに生える野草で、日陰でやや締めっとしたところに大群生を作ります。
葉をもんだりちぎったりすると非常に強い独特の香りを放ち、まるで毒草のように思えることから「毒溜め」と呼ばれ、それが訛ってドクダミとなったといわれています。
実は使いやすい万能野草
このドクダミ、非常に個性的な……というより、多くの人にとっては悪臭とも思えるような香りを放つのですが、その一方で古くから「万能薬草」としても知られてきました。多くの有効成分を含み、内服したり外用することで薬効を得ることができます。
最も有名な利用法はやはりお茶。ドクダミは乾燥して煮だすとその悪臭がなくなり、さわやかで飲みやすいお茶になります。著名なお茶飲料にも含まれていることから、多くの人が口にしたことがあるはずです。
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また高温で加熱しても臭みが消えることから、天ぷらにされることもあります。独特の甘みと酸味を併せ持った美味なものに仕上がります。
もちろんこの香りが大丈夫という人は生のままハーブとして用いてもいいでしょう。中国では辛いたれの薬味として用いられており、羊などの匂いの強い肉との相性は抜群なのだそうです。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>