札幌から約2時間の「積丹半島」はライダーに人気のツーリング・スポットです。夏は海水浴客や、名物のウニを求めて大勢の人たちが訪れますが、静けさを求めるなら秋が一番。積丹ブルーで知られる美しい海岸を独り占めできます。

キャンプもいいですが、日中と夜の寒暖差が激しく、「寒くて眠れない」などということもあります。積丹の西南に位置する「神恵内村」には、リーズナブルな料金で宿泊できるゲストハウスがあります。「泊まれる喫茶店ふくろま」を訪れました。

コンビニがない村にある唯一のカフェ

神恵内村は、アイヌ語で「カムイナイ」(神の沢)を意味し、漁業を中心に発展してきました。大正9 年に人口のピークを迎えましたが、現在は道北の音威子府村に次いで道内で2番目に少ない約750人となっています。

北海道で大きなシェアを占めるコンビニチェーン「セイコーマート」もない神恵内村において、「泊まれる喫茶店ふくろま」は、唯一のカフェです。オーナーの木滑雄大さんは江別市からの移住者です。前職はコールセンターのスタッフで、刺激を求めて2016年に地域おこし協力隊に参加しました。

地域おこし協力隊として住民の方々と接する中で、コミュニティの場が必要だと考えた木滑さんは、3年間の任期終了後、時計店だった店舗をD.I.Yで改装し、2019年に「泊まれる喫茶店ふくろま」をオープンしました。「ふくろま」とは、漁獲した ニシンを海中で一時的に保管する港湾施設のこと。カフェのイメージにピッタリです。

アーティストが集う不思議な空間

地域のコミュニティを目的に開業しましたが、村外のお客さんの利用が多いそう。長期的に旅行している方や、芸術関係のお客さんが立ち寄ることが多く、北海道の全市町村でものまねライブをやりたいという芸人さんが立ち寄ったこともありました。

村民から寄贈されたピアノやギターを使って、ちょっとしたセッションが開かれることもあるそうです。「去年、Twitter(現X) の番組の取材でカンニング竹山さんが、きれいな女性と一緒に来店しました。あとから元AKBの篠田麻里子さんと知って驚きました」

マンガの種類が多く、数えきれないほど。もしも宿泊客が一人きりでも、退屈することはありません。

まるで祖父母の家のよう! 懐かしさを感じる宿泊スペース

1階がカフェ、2階は宿泊スペースで、素泊まり3500円、朝食付き4000円で宿泊できます。村内には夜営業の飲食店は少ないため、応相談で夕食を提供することも可能です。「THE 古民家」という感じで、土壁や畳が懐かしさを誘います。最大11人宿泊できますが「まだ一度も満室になったことがないんですよ」と笑います。

壁などに描かれた絵は、岩内の児童養護施設の子どもたちによるアート。一つ一つが個性的で、いつまでも眺めていたくなります。

無料で使える洗濯機も設置しています。浴室も使えますが、「少々不具合があるので、村内の珊内ぬくもり温泉か泊村の盃温泉の利用をしてください」とのことです。