捕まえてはいけないものを捕まえてしまう犯罪「密漁」。知らずに密漁犯になってしまう事例も少なくないといいますが、実は「捕まえてはいけないもの」には共通点があります。

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【密漁】を避けるために知っておきたい「主物」と「無主物」の原則

密漁の検挙数は右肩上がり

我が国の水産生物には、誰でも許可なく捕まえていいものと許可なく捕まえてはいけないものがあり、許可を得ずに後者を漁獲すると罪に問われます。いわゆる「密漁」です。

【密漁】を避けるために知っておきたい「主物」と「無主物」の原則密漁禁止の看板(提供:PhotoAC)

近年、密漁犯の検挙数は増え続けており、とくにここ数年は新型コロナウイルスの影響で屋外レジャーが盛んになったことから、一般人による密漁が増加しています。

密漁は最も気軽に行えてしまう犯罪行為のひとつと言われますが、罰則は小さなものではなく、普通の漁業権魚種の密漁でも100万円以下の罰金、アワビやナマコ等「特定水産動植物」の密漁では3年以下の懲役または3000万円以下の罰金もしくはその両方を科せられます。

意外なもので犯罪になる例も

密漁という言葉を聞いても、多くの人は「自分には関係のないこと」と思うかもしれません。しかし実際のところ、その真偽はともかくとして、密漁で検挙される人の中には「犯罪と思っていなかった」と供述する人が後を絶ちません。

その理由として「意外なものに漁業権が指定されている」というのは挙げられるかと思います。例えば潮干狩りのターゲットとして有名なアサリ、ハマグリ、シジミといった二枚貝は多くの場所で漁業権が指定されており、無許可で採ると密漁になります。

【密漁】を避けるために知っておきたい「主物」と「無主物」の原則潮干狩りが犯罪になることも(提供:PhotoAC)

またほかにも、タコは釣りでよく釣れますがこれも多くの海域で漁業権が指定されています。そして現状、本当に多くの釣り人が密漁を犯していると言わざるを得ない状態です。

ほかにもワカメ、ヒジキ、テングサといった食用海藻は漁業権があるものが多く、ちぎれて打ちあがったものを拾うだけでも罪に問われることがあります。

キーワードは「主物・無主物」

このような話を聞くと「じゃあもう海で採っていいものなんて何もないのでは?」と怒る人もいるのではないでしょうか。実際はもちろんそういうことはなく、釣りで釣れる海魚は大きさの制限はあれど基本的には採取可能です。

この「密漁になるもの」「ならないもの」を分ける考え方には一つの大きな原則があります。それは「漁協の所有物であるかないか」ということです。

【密漁】を避けるために知っておきたい「主物」と「無主物」の原則タコも主物(提供:PhotoAC)

アワビやナマコ、エビ、タコのような底生生物、あるいはワカメなどといった海藻は、生息域から大きく移動することがありません(タコは実際のところ大きく移動するという説もありますが)。そのためこれらの漁業資源はその水域を管理する漁協の所有物(主物)と規定されます。一方で魚たちは大きく場所を移動することが可能でありどこかの漁協の管理水域にいるものとは限らないため、所有物ではないもの(無主物)とされ、誰でも捕獲可能になります。

海で採取活動を行う際は、この「主物・無主物」の原則を覚えておくと、知らないうちに密漁犯になってしまう可能性が少なくなるでしょう。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>