ロシア側は、ダゲスタンの暴動は「ウクライナと欧米諸国が扇動したものだ」と主張しているが、マンゴット教授は、「ロシアの経済政策、社会政策の失政がイスラム過激主義を助長している、欧米諸国の工作説は考えられない。ただ、ウクライナには2014年にロシアからウクライナに亡命し、反プーチン運動を主導しているイリヤ・ポノマリョフ氏がいる。彼がダゲスタンのイスラム過激派を煽っているということは考えられる」という。ちなみに、ポノマリョフ氏は元下院議員で、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合した際、下院で関連法案に唯一の反対票を投じた。

ところで、ロシアは10月7日のハマスの奇襲テロをこれまで批判していない。プーチン大統領はハマスの指導者を招いて会見している。マンゴット教授は、「ロシアはパレスチナ人の解放運動を支援してきた。パレスチナ指導者は度々モスクワ入りしてきた」という。プーチン大統領はガザ区の現状を「ナチス・ドイツ軍に包囲されたレニングラード(現サンクトペテルブルク)のようだ」と述べている。

いずれにしても、ロシアは低所得国、植民化時代への恨み、反欧米主義傾向が根深いグローバルサウスへの影響を考え、イスラエル軍に攻撃されるパレスチナ人問題を無視できない立場にあるという。

一方、ロシアとイスラエル両国関係については、「パレスチナ紛争が再開するまでは良好関係だった。イスラエルは欧米諸国の対ロシア制裁には参加せず、ウクライナへの先端兵器の供与は拒否している。一方、ロシアはイスラエルがシリアやイランの軍事拠点を爆発するなどの軍事行動に対しては黙認するなど、両国は互いに関係を維持してきた」と説明した。

最後に、ロシアとウクライナ間の戦争の見通しについて、マンゴット教授は、「ロシア軍は大規模な攻勢は現時点では難しい。一方、ウクライナ軍も夏ごろから開始した反攻もあまり領土を奪い返すことができなかった。これからは冬の季節を迎えるから地上戦は難しい。本格的な戦闘は来年春以降となるだろう」と予想している。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年11月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?