そりゃそうです。アメリカ国債の発行残高は31兆㌦もあり、その巨大な市場ゆえに恣意的な相場操縦は出来ないのは確かです。ただ、一つ言えるのはその多くは安定的所有者なのです。31兆㌦のうち、外国が所有しているのは7.5兆㌦。うち、日本が1.2兆㌦所有し最大。問題は中国です。22年10月には中国は9700億㌦のアメリカ国債を持っていました。ところが23年8月で8000億㌦に減少しているのです。この直近の2か月の動きがわかりませんが、私は相当売っているのではないか、とみています。

もしも仮に中国の国債売りが10年物国債の利回りに影響を与えているならアメリカの国債利回りは悪い上昇に転じており、キャッチ22(ジレンマに陥り、もがいても解決できないこと)状態に陥っている可能性があります。これは実体経済を反映しない市場となり、金利をいくら上げても意味がないどころか、タコ足経済(自国民の財《ストック》を食いながらフローの表記であるGDPだけを見て景気を判断すること)になりかねないように感じるのです。

分かりやすい例え話です。日本の国債市場はほぼ国内所有者で完結しており日銀がその主導権を握っています。よって出来高が薄いのです。これは外国人の国債所有者がいないからこそ市場をコントロールできるのです。もしも仮に日本の国債を外国が持っていてそれを市場で売りに出したら市場が非常に希薄なのでボラティリティが高くなるはずです。しかし、これは国内景気というよりテクニカルな話です。ですが、日銀は金利を引き上げざるを得なくなるのです。幸い、日本ではアメリカで起きているような問題は生じません。

市場というのは数字だけ見ても分からないものでなぜ、そうなったのかをカラダで受け止めないと本質がつかめません。少なくとも私は今のアメリカの金融市場はおかしい、そして先行指標である政策金利が経済の実態と比べて下がってこないのはミステリアスというしかないのです。

金融市場って本当に奥が深いと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月31日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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