例えば、オーストリアのネハンマー首相は、ハマスに対する「断固とした行動」を呼びかけ、停戦に反対を表明し、「停戦などのあらゆる幻想はハマスに力を与えるだけだ。ハマスとの戦いには一切の妥協があってはならない」と強調している。

ショルツ独首相は、「ハマスによる恐ろしいテロから自国を守るイスラエルを支持していることを明確にすべきだ。イスラエルは人道的な原則を備えた民主国家だ。イスラエル軍が国際法の規則を遵守していると確信している」と述べている。

舞台裏の交渉では、前者は「即時停戦に代わって人道的回廊の設置などのために一時的停戦」で歩み寄る。後者は人道的な理由による停戦は必要という点で異議を唱えない。そして最終的には、声明の中で「人道回廊」や「休憩」の言葉は複数で書く(humanitarian corridors” and “breaks”)。これは妥協の産物だ。EUがイスラエルに対しハマスとの戦闘を即時停止するように求めていないことを明確にする狙いがあるわけだ。

EUが採択したガザ情勢の首脳宣言文はハマスやイスラエル側に影響を与えるものではない。ただ、EU27カ国がガザ情勢で共通のスタンスを有していることを対外的に示したことになる。ちなみに、イスラエル側はブリュッセルの採択された文書に対してこれまで何のコメントも発表していない。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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