東京・新宿の「√K Contemporary(ルートKコンテンポラリー)」は、11月18日(土)~12月16日(土)の期間、堀江栞(ほりえしおり)氏の個展「かさぶたは、時おり剥がれる」を開催する。
儚く繊細な作品が揃う堀江氏の個展をチェックして欲しい。
めざましい活躍を続ける堀江氏の待望の個展
同展は、2021年に開催した五島記念文化賞海外研修成果発表展「声よりも近い位置」以降、VOCA賞佳作賞、そして神奈川県立近代美術館鎌倉別館での「生誕110年 松本竣介/『小企画』堀江 栞—触れえないものたちへ」開催など、めざましい活躍を続ける堀江氏の待望の個展となる。
ドローイング作品約110点と《後ろ手の未来》の新作を発表
同展では、2022年に開催した神奈川県立近代美術館鎌倉別館での展示で初出展した水彩絵具を使ったドローイングシリーズ約110点に加え、VOCA佳作賞を受賞した《後ろ手の未来》シリーズの新作を出展する。
傷を負い、それが「かさぶた」となり、その後治癒していく
近年、堀江氏は恐らく初めてといっていいほどに描く事に恐れを感じ、岩絵具に向き合う事が出来なくなるという期間を過ごした。
描き続けてきた堀江氏にとって、その苦悩がいかほどであったのか、想像もつかない。しかし、この葛藤の中、堀江氏を一歩ずつ前進させたものは、やはり描く事だった。
ドローイングというパリ留学時代から始めた表現に活路を見出し、数多くの小さなドローイング作品を描きつづけた。
これらの作品群の小さな白い画面に描かれているのは、人の顔のような、未知の生命体のような「何か」に見えるが、同氏はこれらは「かさぶた」だという。
重なり合う鮮やかな水彩絵具の柔らかな透明感に、葛藤を受容し、それを超えて描く事に対する同氏の執着が無意識に筆を運ばせているような、ある種の明るさが見えてくる。
それはあたかも、描くという行為が自身の一部であり、そして原点であると再認識し、また歩みはじめる、同氏にとっての癒しの過程を垣間見ているようだ。
傷を負い、それが「かさぶた」となり、その後治癒していく。生きる上で誰しもが経験する過程そのものがこれらの作品群に表されている。
さらに、同展では、約1年半のブランクを経て改めて岩絵具に向き合った《後ろ手の未来》シリーズの新作も出展。
2022年のVOCA佳作賞を受賞したこの作品は、画面いっぱいに描かれた人物がずらっと並び、圧倒的な存在感を放つ。ドローイングとは対照的な岩絵具の重厚かつ繊細な質感と堀江氏らしいマチエールには、脆くはかない存在でありつつも力強く立ち続ける人の姿が写し出されている。
《後ろ手の未来 #2-#6》に新作を加えて展示
同展では、2021年に制作された《後ろ手の未来 #2-#6》に新作を加えて展示する。
また、同展のタイトルとなったエッセイ「かさぶたは、時おり剥がれる」が掲載された堀江氏の画集「声よりも近い位置」も、同展にて販売する。
多くを乗り越え、自らの経験を咀嚼し、人として、アーティストとしてさらに成長を続ける堀江氏が開拓する新たな表現世界を観に、同展へ足を運んでみてはどうだろう。
堀江栞「かさぶたは、時おり剥がれる」
会期:11月18日(土)~12月16日(土)
会場:√K Contemporary
所在地:東京都新宿区南町6
(角谷良平)