ドウグラス・グローリ(左)キャスパー・ユンカー(右)写真:Getty Images

日本サッカー協会(JFA)審判委員会は10月26日、東京都文京区のJFAハウスにてレフェリーブリーフィングを開催した。

同月15日に行われた2023JリーグYBCルヴァンカップの準決勝第2戦、名古屋グランパス対アビスパ福岡(0-1)において、名古屋のPKが取り消される事態に。JFAはこの事象に関する説明を行った。


ドウグラス・グローリ(左)キャスパー・ユンカー(右)写真:Getty Images

VAR介入でPK判定が取り消しに

問題のシーンは、ホームの名古屋が0-1とリードされて迎えた後半8分。DF藤井陽也が敵陣右サイドでボールを奪うと、ここから同クラブの攻撃が始まる。その後のルーズボールにホームチームのMF吉田温紀がスライディングで反応し、このパスを受けた味方FWキャスパー・ユンカーがペナルティエリアへ侵入。そこでドリブルを仕掛けると、福岡のDFドウグラス・グローリと交錯した。

ユンカー転倒後もプレーが続き、名古屋のFW永井謙佑のシュートが福岡GK永石拓海に弾かれてゴールラインを割る。この直後に今村義朗主審の笛が鳴り響き、同主審はすぐさまペナルティマークを指差した。

名古屋にPKという判定が下されたが、ここでビデオアシスタントレフェリー(VAR)が今村主審にオンフィールドレビュー(※)を進言。この結果、グローリはユンカーを躓かせていなかった(接触は無かった)と見なされ、PK判定が取り消された。

この時点で2戦合計スコア0-2と劣勢に陥っていた名古屋にとって、PK取り消しは大きな痛手に。試合終盤の猛攻も実らず、同クラブは第2戦も0-1で落とし、決勝進出を逃している(2戦合計0-2で敗退)。

(※)VARの提案をもとに、主審が自らリプレイ映像を見て最終の判定を下すこと。


東城穣氏 写真:Getty Images

この騒動の争点は

今村主審がPK判定を取り消し、ペナルティエリア内でのドロップボール(福岡ボール)で試合を再開しようとしたところ、名古屋のMF稲垣祥とFW永井が猛抗議。この事象に関する質問に、JFA審判マネジャーJリーグ担当統括の東城穣氏が回答している。

ーユンカー選手とグローリ選手が交錯した場面で、一度PK判定が下されましたが、オンフィールドレビューを経てそれが取り消されました。その後の試合の再開方法が気になっています。名古屋側のシュートが福岡の選手に当たり(GK永石にセーブされて)、そのボールがゴールラインを割った後にホイッスルが鳴りました。PK取り消しは仕方ないけど、ならば(ドロップボールではなく)コーナーキックでプレー再開ではないか。名古屋の選手がこのように主張しているように見えましたが、あの場面におけるドロップボールでの試合再開は、競技規則上正しかったのでしょうか。

「多分、皆さんもそういう反応をされるでしょうし『PKの件はしょうがない。じゃあコーナーキックでやらせてよ』というのが、名古屋側の心情だと思います」

「ただ、そもそもVARがなんでオンフィールドレビューを進言したかというと、PKかそうでないかという観点で介入していますよね。(ユンカーとグローリの交錯後にシュートが放たれ、GK永石が弾いたボールがゴールラインを割ったという)結論については分かるんですけど、主審は2人の交錯をPKと判断して、そこでプレーが終わっている(と見なされる)」

「オンフィールドレビューを経てPK判定で良ければそのままですし、そうでなければペナルティエリア内で笛を吹いた(主審がプレーを停止した)ことになるので、あの場面では福岡のGKへのドロップボールが、正しい再開方法になります」

『サッカー競技規則2023/24』にも「ボールがペナルティエリア内にある、もしくはボールが最後に触れられたのがペナルティエリア内という状況でプレーが停止された場合、ボールは同エリア内で守備側チームのゴールキーパーにドロップされる」と明記されている。

名古屋のMF稲垣とFW永井が抗議したこともあり、試合の再開方法についての疑問や不満の声がSNS上に散見されたが、ルール上問題は無かったようだ。