むしろ厳しいのは個人事業主で仕入れやコストの上昇に対して小売価格を引き上げる価格調整力が市場シェアの理論から困難であるため、利益を圧縮せざるを得なくなります。巷で言うラーメン屋の倒産増加というのはこの典型的な例なのです。

仮に減税で消費が過熱する場合、かねてから検討されている日銀の大規模金融政策の方針転換の背中を押すことになるでしょう。経済対策にかかわりなく、日銀は年内から年初にかけて「大規模緩和」の「大規模」を取る政策にし、来年のしかるべき時期に正常化に踏み込む算段ではないかとみています。所得税減税はそれを前倒しするのみならず、既に0.8%を超えている長期金利をより上がりやすくし、1.0-1.2%程度に向かうことが確実となり、住宅ローンと企業の銀行借り入れ金利に影響が出て、景気をやや冷やしやすい側面が生まれます。

個人的には高橋氏の支持するような案ではない気がします。今回はブロードな減税にせず、的を絞った補助金主体の方が機能するのではないでしょうか?あと、これは簡単ではないですが、年金のインフレ連動が十分機能していない気がします。国民年金の人はある意味、かわいそうなほど物価高に対して無防備状態だと思います。一方、国民年金の支払い金額も長年ほとんど変わっていないのは政府の無策と言われかねません。

つまり飴とムチの使い分けができていないのだと思います。もちろん、政府は恐ろしくてそんなことできない、というでしょう。しかし、財務の健全化とは一方にとっておいしい話ばかりをするのが能ではないのです。ギブアンドテイク、その発想を持ち込まないと日本は貧乏に向かうだけではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月19日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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