「労働時間減少」は見せかけの部分も多い
現代では、業務に応じて企業と自由に契約を交わし働くフリーランスや、仕事を掛け持つダブルワークの増加など、労働形態の多様化によって1985年当時よりもかなり複雑になっているようだ。
「フリーランスはその最たるもので、自営扱いのため成果物ベースの賃金体系が基本で、余程の交渉力がある人でなければ安い報酬で長時間働かざるを得なくなっています。そういった実際の労働時間が見えにくくなる仕組みが次々と導入されているのです。先ほどの裁量労働制という制度の拡大もそのひとつです。ほかにも、年収1075万円以上という一定の年収要件を満たした、専門的かつ高度な職業能力を持つ労働者を対象に、労働時間にもとづいた制限を撤廃する高度プロフェッショナル制度もあります。
企業側が労務管理責任を軽くするために、労働時間を労働者自らに管理させるようになってきているともいえるでしょう。いずれにしても、このように労働時間を測らない働き方が増えているので、表面的な数字として平均労働時間が短縮されているからといって、1985年よりも生産性が上がっているということや、労働環境が改善されているということは、一概にいうことはできないのです」(同)
「労働時間減少」に錯覚の要素が多いということであれば、1985年より実質的な労働環境の改善がされているとはいいがたい。見せかけの労働時間でなく実際の労働時間を把握する試みを推進していくことや、働いた成果がきちんと賃金に反映される仕組み作りなどを、社会全体で行っていく必要があるのではないだろうか。
(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio、竹信三恵子/ジャーナリスト、和光大学名誉教授)
提供元・Business Journal
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