「貴公子」と称される英才ヴァイオリニストであり、ドイツを活動拠点とする若手クラシック奏者集団「シンフォニアクス」のメンバーでもあるヨハネス・フライシュマン(Johannes Fleischmann)氏。
デビューアルバム『Exodus』以来、約2半ぶりの最新作となる『Solitaire』をリリースした。世界を飛び回る若き才能に注目だ。
音楽の都ウィーンが生んだヨハネス・フライシュマン氏
オーストリアのウィーンで音楽一家に生まれ育ったというヨハネス・フライシュマン氏。
ウィーン・コンツェルトハウスでブラームスのヴァイオリン協奏曲によりソロ・デビューを飾って以来、オーストリア外務省により「新しいオーストリアのサウンド・オブ・ミュージック(NASOM)」プログラム大使に任命され、室内楽奏者として多数の著名なアーティストたちとステージを共にしてきた。
2021年にリリースされた前作『Exodus(移住)』(コルンゴルト&ツァイスル作品集)は、2021年ドイツ・レコード批評家賞、2022年国際クラシック音楽賞(ICMA)にノミネート。
高い評価を得た彼が、新作ではピアニストのクリストフ・ウルリヒ・マイヤー氏と共演する。2人は2019年からデュオとして一緒に演奏活動を行っている。
宝石を意味するニューアルバム『Solitaire』
新作のタイトル『Solitaire』とは、一粒だけを配した“宝石”、もしくはひとつの“作品”を意味している。まさに宝石のごとく、知る人ぞ知るヴァイオリンとピアノのための珠玉の作品が収録されている。
一方、Solitaireには“孤独・寂しい”という意味もあり、偉大なヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムが掲げた「自由だが孤独」の理念とも一致する。
アルバムにはワグナーと彼の義父であるリスト、ツェムリンスキーと義弟シェーンベルク、ツェムリンスキーの盟友ブラームスとブラームスの友人で協力者であるロベルト・シューマンやヨアヒムまで著名な作曲家たちの作品が登場。それぞれの世界が重なり合い、贅沢なまでに美しく魅惑的な世界が繰り広げられる。
一方で、最近の作曲家たちの作品も取り上げられる。エストニアの作曲家アルヴォ・ペルト氏や、ギリシャの作曲家で指揮者のコンスタンチン・グルチッチ氏。
グルチッチ氏は断片的にしか残っていないハイドンのオペラ『フィレモンとバウキス』の空白部分を自作しているが、そのひとつが「Aria」だ。「Aria」は2003年にソプラノ・アリアが作られ、2022年にグルチッチ氏がヴァイオリンとピアノ用に書き換えた。
そのハイドンの機知に富んだ「Jacob’s Dream」、ロッシーニ、ライネッケ、イザイによる作品も収録されている。
配信はApple Music、Amazon Music、Spotifyほか各種プラットフォームにて。YouTubeではミュージックビデオ「Wesendonck Lieder, WV 91: V. Träume」を配信している。
所属する「シンフォニアクス」では、誰もが知る名曲にエレクトロニックなサウンドやビートを取り入れるなど、斬新な「ネオクラシック」を提唱する。国も時代も軽々と飛び越える若きヴァイオリニストの活躍から目が離せない。
ヨハネス・フライシュマン『Solitaire』
(SAYA)