不動産取引時の「囲い込み」「両手仲介」という慣習を知っているだろうか。不動産仲介業の不動産流通システムは、不動産賃貸・売買に関する仲介手数料と、「囲い込み」と呼ばれる不動産業界の商慣習等について、消費者の認知度調査を行った。調査では不動産の売買の仕組みを理解している消費者はごく少数に留まる事が明らかとなっている。
不動産仲介業者による「囲い込み」とは?
不動産売買の売買や賃貸の契約が成立した場合、不動産仲介業者は仲介手数料を受け取る事ができ、これが仲介業者の大きな収入源となっている。売主(貸主)側の元付仲介業者と買主(借主)側の客付仲介業者が存在する場合、それぞれが仲介手数料を受け取り、取引が成立する。
しかし、元付仲介業者は売却物件の買主も自分で見つけた場合、客付仲介手数料も得る事が可能となる。このように、売主から買主までの仲介を一手に行い、元付、客付両方の仲介手数料を得る事を「両手仲介」と呼ぶ。
「両手仲介」自体は違法ではないが、この「両手仲介」を実現させる為に、不動産業界には「囲い込み」という悪しき商習慣が存在している。「囲い込み」とは元付仲介業者が買主を自社で見つける為、他の不動産業者からの購入希望をブロックする事を指し、不動産の健全な取引を阻害する要因となっている。
不動産取引の仕組みについての認知度は非常に低い
今回の調査では「両手仲介」や「囲い込み」等、不動産賃貸・売買に係る仕組みの認知度が明らかとなっている。調査は8月1日~28日にかけてインターネット上で行われ、東京都内在住で持ち家に住む35~59歳の男女500名から回答を得た。
「囲い込み」という行為の認知度を調べたところ、「知っている」と答えたのは、男性で3.2%、女性で2.0%となった。「全く知らない」と答えた人の割合は、男性で73.2%、女性で84.8%に上り、実に約8割の人が「囲い込み」という慣習を知らない事が分かった。
「両手仲介」の認知度についても、「知っている」と答えたのは、男性で5.2%、女性で3.6%となった。「全く知らない」と答えた人の割合は、男性で79.2%、女性で89.2%となり、こちらも多くの人が仕組みを理解していないという結果となっている。
また、不動産賃貸の仲介手数料がいくらになるか把握している人は男性で19.2%、女性で16.8%となっており、不動産売買の仲介手数料に上限が定められている事を知っている人も男性で10.4%、女性で6.0%と低い割合に留まっている。不動産の賃貸、売買共にそもそもの仲介手数料の仕組みを理解している人も少数であり、仲介手数料を言われるがまま、上限で支払っているケースも多いのが実情である。
非常に大きな金額が動く不動産取引であるが、その実態や仕組みについてしっかりと把握している消費者はごく少数に留まっているようだ。不動産取引は相対取引となり、詳細はブラックボックスに包まれているというケースが非常に多いという事が明らかとなっている。
顧客利益の最大化を図るエージェント制とは?
不動産取引は相対取引となり、高度な専門性も要求される為、取引は仲介業者に任せきりとなってしまうケースも多い。こうした事情が「囲い込み」という商習慣が無くならない要因にもなっている。今回の調査でも消費者の不動産取引に関する認知度は非常に低い事が明らかとなっており、不動産取引健全化の課題と言える。
消費者の知識向上が求められる事はもちろんであるが、近年はこうした商慣習を打破しようと仲介手数料の割引や削減を謳う仲介業者もある。また、エージェント制と呼ばれる形態も脚光を浴びるようになっている。
エージェント制とは、売主や買主の利益の最大化を図る不動産売買の代理人が売買を行う制度である。「両手仲介」の場合は売主と買主の利益相反が起こるが、エージェントは売主や買主の利益最大化を目的とした代理人となり、ブラックボックスに包まれがちな不動産取引において、専門性を活かした取引を行う事が可能となる。米国等では、不動産エージェントの活用は広く普及しており、日本でもニーズの高まりが予想される。
不動産取引は高い専門性が要求される複雑な取引であるが、エージェント制の普及によって、不動産市場の活性化と取引の健全化が期待される。それと併せ、消費者の知識向上も進めば、日本の不動産流通市場は大きく発展する可能性がある。
文・MONEY TIMES 編集部
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